デメオCEO、ロシア事業を語る

投稿日: カテゴリー: 欧州自動車・モビリティ情報

13日付けの仏レゼコー紙は、ウクライナ危機の勃発により突如としてロシア事業の重大な危機に直面したルノーのルカ・デメオCEOの談話を掲載した。この記事は同時にCEOの経歴や人柄を紹介し、スナール会長との関係などにも触れている。またロシア事業やCEOとの関係に関するスナール会長の意見も紹介している。
ルノーは3月23日に、ロシア工場の操業停止を発表し、「ラーダ」ブランドを展開するロシア子会社アフトワズについても、出資に関するオプションを検討するとして、資本関係を解消する可能性を示唆した。2020年に過去最高の80億ユーロの損失を記録したルノーの経営再建を託されたデメオCEOは、スナール会長との二人三脚で新型コロナウイルス危機や半導体調達難などの試練を乗り越えて業績の改善を進めてきたが、ロシア事業の危機で傘下5ブランドの1つを失うリスクに直面している。
デメオCEOは、3月23日の決定について、ロシア事業に関して金融市場に強いシグナルを送る必要があったと弁明。12年から13年を費やしてロシア事業を収益可能にしただけに、手痛い事態だと認めた上で、そこを我慢すれば、その後は落ち着いて交渉できるとも述べた。なお、3月23日には、ウクライナのゼレンスキー大統領が仏上下院でリモート演説を行い、その中で、ルノーの名前を挙げて、ロシア事業を打ち切り、ロシアに戦争資金を供給するのをやめてほしい、と訴えていたが、同じ日にロシア事業に関する決定を下したのは「単なる偶然」だとデメオCEOは言明した。
CEOは、経済制裁が導入され、サプライチェーンが破壊されると、部品を調達できないので、ロシア事業を停止せざるを得なかったと説明。自動車産業では、生産が止まれば、あっという間に手元資金がなくなってしまうと指摘し、事業を続けようとしたらまっしぐらに破綻に突き進んだだろうと強調した。
ロシア事業を失うことの影響について、デメオCEOは、影響はもちろんあるが、ルノー・グループ全体の販売数の18%、売上高の10%に過ぎないと指摘。自動車事業部門の営業利益に占める割合は確かに大きいが(49%)、ロシア子会社は自律的で、ルノーは配当金は一切受け取ったことがなく、利益は巨額の債務の返済に回されていたと説明。シナジーもほとんどなかったという。
デメオCEOは2020年7月に就任し、ルノーは2021年には10億ユーロ近い純利益を達成して黒字化を達成したばかりだった。それだけに、ロシア事業の危機はCEOにとって最初のテストでもあり、またスナール会長とのチームワークにとってもテストとなる。
CEOは、取締役会にはかる前に、会長と一緒に決定を下したことを明かし、会長が信頼してくれるので、会長と多くを共有しており、99%の場合にほぼ意見が一致すると述べた。会長は決定前の検討段階では介入しないが、CEOは重要な決定については、会長と相談することを好んでいるという。CEOは、プジョーや日産と同様に、ロシア資産をメディアのヒステリックな報道から保護する必要があったとし、アフトワズとルノー・ロシアの将来に関する選択肢をこれから検討するとしている。
ルノーはラーダをグループの共通プラットフォームに統合することを計画していたが、今や、アフトワズの株式の70%弱を誰に譲渡するかが重い課題となっている。アフトワズのもう一方の株主であるロステックは制裁の対象になっており、ルノーの持ち株を買収することはできない。
デメオCEOは、「変数の多い方程式で、解決するのが難しい」と認め、新たなプラットフォームを用いて新世代の「ラーダ・ニーヴァ」の開発を計画していた折だけに、残念だと悔しさを隠さない。ルノーのスタッフがアフトワズ再建のために行った努力は素晴らしいもので、可能な限り、その成果を守りたいとも説明した。
ロシア事業の危機が、ルノーの電動化戦略に及ぼす影響について、CEOは、短期的には燃料価格の高騰がEVの購入を促し、ルノーでも3月にはHEVやEVの販売が50%以上増加したと指摘。1リットル当たり2ユーロ以上の燃料価格が、EV購入の意欲につながる心理的引き金になっていると評価している。
しかし、長期的には、原材料のバリューチェーン管理と価格に悪影響を及ぼすことも認め、すでにニッケルやコバルトの価格急騰が起きていることに言及した。また、ロシアが排ガス浄化触媒に使うパラジウムの主要生産国であることも指摘し、原材料の供給が緊張していると述べた。
一方、スナール会長は、危機の影響によるインフレで、自動車のコストが上昇すると、内燃エンジン車からEVへの移行に遅れが生じる可能性もあるとコメント。またデメオCEOとは毎日話し合っており、ユーモアがあり、南欧的な人柄、状況を素早く把握する能力などを高く評価していると褒めた。またスタッフに責任を持たせることを重視する経営哲学を共有しており、部下を軽視せず、権威主義的なところがないのも自分と同じだと述べて、ゴーン時代に対する批判をにじませた。
日産自動車との関係について、デメオCEOは、アライアンスの運営はスナール会長の仕事だとした上で、部外者にはわかりにくいが、日産自動車の株式の43%を保有しているからといって、ルノーは日産の所有者というわけではなく、フォルクスワーゲン(VW)とアウディのような関係とは異なると強調。CEOは「私の目的はルノーの価値を強化することだ。日産は予算もエンジニア数も3倍だったので、日本側は我々を筋肉が衰えた人間のようにみなす傾向があった。そこで私はルノーの技術面での野心を強化することに努めている」と説明。会長もCEOも、「日産マイクロ」が仏ドゥエ工場で、ルノーとの共通バッテリーを用いて生産される予定であることを、アライアンス内におけるルノーと日産の均衡回復の良い兆候とみなしている。
なお、スナール会長は、ロシア事業について「ルノーが底なしの井戸に落ちるのを防ぎ、現地のスタッフ(4万5000人の従業員)を保護するために、危機を可能な限り賢く管理する必要がある。サプライヤーと下請けを含めると、100万人の命運がかかっているので、責任は重い」と語った。