2022年3月22日 編集後記

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ロシア国民の半数は今でも、国営テレビ放送を主な情報源としており、プーチン大統領の主張を鵜呑みにしている人が多いのだという。フランスのニュース専門局の現地ルポなどで、「ウクライナはナチス国家で、戦争やロシア人に対する虐殺を行っているのはウクライナ側」と確信しているロシア人の様子を見ると、嘆かわしいのを通り越して、なにやらかわいそうな気がしてくる。しかし、もちろん、米欧諸国の人間が公正で中立的な情報を得ているという保証はどこにもないわけで、実は我々も多くのロシア人と同じように、正しく、客観的だと無根拠に信じている小宇宙的な情報世界の中に隔離され、閉じ込められて生きているだけなのかも知れない。そして、インターネットがこうした島宇宙化や列島化を防ぐどころか、むしろSNSなどを通じて強化する傾向があることはつとに指摘されるところだ。厄介なのは、いまでは迫真力のあるフェイク画像やフェイク動画をいくらでも作り出す技術があるということで、真贋の判断は一般人には難しい。最終的に頼れるのは自分の信念しかないことになってしまうのだろうか。いま、ロシアがウクライナに侵攻して、民間人にまで残虐な攻撃を行っているという事件が現実に起きていることを筆者はもちろん疑っているわけではなく、むしろその不条理さに圧倒され続けるほかないのだが、同時に、壁の向こう側には、その現実をいささかも信じることがない多くの人々が生きているというもう一つの不条理な分厚い事実にもやはり圧倒される気がしているのだ。