デメオCEOのインタビュー

投稿日: カテゴリー: 欧州自動車・モビリティ情報

ルフィガロ紙は、ルノーの2021年業績を報じた2月19日付けの紙面で、同社のデメオCEOとのインタビューを同時掲載した。その概要は以下のとおり。
問:ルノーは2021年に黒字復帰したが、業績回復は持続的なものか?
答:ルノーは2020年に80億ユーロの損失を記録した。これをまた繰り返すわけにはいかないので、他のメーカー以上に効率性の改善と固定費の削減に努めた。危機はこうした努力を加速させるきっかけとなり、当初の予定より2年も前倒しで業績を立て直した。これにより実現した固定費の削減は構造的なものだ。新型車について適切な決定を下し、各セグメントで適切なモデルを決め、強固な利益を確保した。2022年末から2024年にかけて、ルノーのラインナップは非常に充実したものとなる。ルノーは競争力を回復した。
問:ゴーン元会長は、ルパリジアン紙とのインタビューで、ルノーは「情けない業績の脆弱な弱小メーカー」になったと断じたが、どう思うか?
答:私は他人の仕事について判断を下すような傲慢な真似はしたことがないが、業績の数字を見てもらえば良し悪しは明白だ。音楽と同じで、数字は普遍的な言葉だ。私の仕事は未来のために働くことであって、過去を振り返ることではない。
問:ルノーの時価総額は2018年の半分未満の110億ユーロでしかない。なぜか?
答:ルノーは価値評価のポテンシャルが最高のメーカーだ。投資家が自動車メーカーの価値を評価する場合には、そのメーカーが電動化、自動運転支援、ソフトウェアのような課題に挑む能力を見る。電動化におけるルノーの能力は高く、フランス北部に3工場で構成される「ElectriCity」拠点を整備中であり、2ヶ所のバッテリー工場を計画しており、クレオン工場で優れた電気モーターを製造するためにヴァレオと提携し、また革新的なモーターを開発するスタートアップ企業Whylotにも出資している。コネクテッドカーやソフトウェアの分野でも開発を急ぎ、先端メーカーとなるだろう。2025年にはテスラに近いアーキテクチャの車両を投入する。
問:内燃機関エンジン車と電気自動車を分離する形でのグループの再編に関する調査を開始するそうだが、それは株価を引き上げるためか?
答:2つの極からなるそのような新組織は、電気自動車におけるルノーの能力をより可視的にするだろう。ルノーのチームの一部を電気自動車技術に集中させる手段ともなる。電気自動車と内燃機関エンジン車は別物だ。前者では技術革新の必要があり、市場は急成長中だ。後者は大規模な投資が不要で、利益を生む事業であり、パートナー企業に開放することも可能だ。
問:それだと、過去の事業を扱う子会社と未来の事業を扱う子会社に分かれることになるのではないか?
答:それは違う。この選択はまだ検討中だが、もし決定すれば、発展に向けたプロジェクトとなる。システムを牽引するために二兎を同時に追うという選択だ。プロジェクトを実施する場合には、あらゆる当事者との協議の上で行う。内燃機関エンジン車にも未来がある。欧州における完全電動化については、2040年を望んでいる。2035年では早すぎる。
問:ルノーは過去に自動車生産を大々的にフランス国外に移転した。こうした動きを逆転させるつもりか?
答:企業が成功するためには、リーダー役を担う必要がある。それにはアイデア、勇気、度量の大きさなどが求められる。ルノーはフランスにおけるリーダーシップを取り戻し、エコシステムの強化に貢献しなければならない。フランスの自動車産業が電動化への転換に成功すれば、50万人の雇用創出が可能になる。これは内燃機関エンジン車部門で破壊される雇用を補って余りある。ルノーをフランスにおける電動化のリーダーにすることを決めた際には、社内に反対もあったが、その後に前進した。1年間で、「ElectriCity」拠点、エンビジョンとベルコールのバッテリー工場などの計画が開始した。ルノーはフランス国内で小型EV「R5」を製造するという賭けに出たし、この賭けに勝てると思う。ルノーのチームにとり、これは挑戦だが、ルノーのようなグループは勝負の行方を変えることができる。
問:過去に国外に生産を移転したことで、ルノーは責任に背いたということか?
答:最近数十年間にフランスの製造業は衰退した。これは企業、政治家、労組などを含む集団的な責任だ。ルノーは、サプライヤーを支援し、ドゥエ工場に10億ユーロを投じて再生を図ったが、同工場が生産したモデルは売れなかった。今日では、ルノーはEVを中心に、フランスへの生産回帰を進めている。9車種がフランスで生産される。これは前例がないことだ。
問:新型車は大多数の欧州市民にとって高くなり過ぎたのではないか?
答:確かに、新たな規制のせいで、ガソリン車も含めて、自動車の価格は高くなるだろう。しかしルノー・グループは、特にダチアにより、全員にとって手頃な価格の自動車を提供している。またフラン工場では中古車の整備事業も開始する。