ブルガリアで新政権が発足した。率いているのは、北米で育ち、米国の有名大学で学んだ若手政治家であり、汚職撲滅を旗印に掲げて総選挙で勝利した。ブルガリアはルーマニアと並んで汚職の温床として知られ、汚職の解決が欧州連合(EU)加盟の条件だったはずだが、加盟後も一向に事態は改善していないのは両国に共通の問題だ。ブルガリアは人口が700万人弱の小国だが、エリアス・カネッティ、クリスト、ツヴェタン・トドロフ、ジュリア・クリステヴァのような国際的な作家・アーティスト・思想家を輩出している。決して人材を欠いているわけではなさそうだが、これらの人々がいずれも外国に活躍の場を求めたことをみても、ブルガリアがいかに生きにくい国であるかがうかがわれる。国際的と言えば格好はいいが、母国で幸せになれなかった人々は二重に不幸だとも言えるだろう。汚職や腐敗はもちろん人間が集団で暮らす限りつきまとうもので、ペトコフ新首相が宣言するような完全な撲滅が可能とは思われないが、せめて西欧並みにまで抑えることができれば、高い教育水準と外国語運用能力などを活かして、欧州内でより積極的な役割を担う潜在力がありそうだ。逆にペトコフ政権による意識改革の試みが失敗に終われば、ブルガリアの未来は暗い。2025年に成果を確認するのが今から楽しみである(残酷な楽しみにならないことを祈ろう)。