2021年12月14日 編集後記

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2012年のロンドン五輪や翌年の世界選手権での金メダリストとして著名な元競泳選手ヤニック・アニェル氏(29才)が未成年者に対する性的暴行の容疑で取り調べを受けている。事件が起きたのは2016年、相手は当時のコーチの娘で13才だったといい、アニェル氏は24才だった。同氏は12月13日までに、2016年中に仏国内だけでなく、タイやブラジルなど 国外遠征の際にも、同じ少女と性関係を持ったことを認めたが、強制的ではなかったとも主張している。ただし捜査当局側では、両者の年齢差などを考慮し、強制性があったとの見方に傾いている模様。
これに先立ち、著名な環境保護活動家で現政権の環境相も務めたニコラ・ユロ氏にも複数の性的暴行疑惑が生じているが、このうち1989年に起きたとされる事件では相手が16才の少女だったため、時効が成立しているにもかかわらず、検察が捜査を開始した。
10代の少女が経験する生きにくさのようなものを、高齢男性である筆者はうまく想像することができないが、同じ10代でもその(性的体験も含めた)身体的・精神的体験には大きな違いがあるだろうから、一律に論じることはできない。有り体に言えば、イケメンのカリスマ的男性による強引な誘惑に負けることもままあろうとは思うが、だからといって、男性の側に他者を支配し、弄ぼうとする歪んだ意志が働いていなかったとは限らない。2つの主観性の間で何が本当に起きたのかは、他人にはもちろん、当人自身にも正確には把握できない面があるだけに、こうした事件への対応は難しいに違いない。
面白いと、言っては語弊があるが、1960年代にもてはやされたフリーセックスとかフリーラブなどの脳天気な性的解放は、どこに行ってしまったのかと感じることがある。我々は今、性衝動をコントロールすることがいかに難しいか、性衝動の暴走がどのような悲劇を招くか、などを再発見しつつある。女性の地位が向上しつつある一方で、プレデターとしての男性の横暴な行動が意外なところで次々と露呈している。もちろん社会の変化に連れて、無意味な因習などからの健全な解放が全くなかったわけではないが、性衝動とその歪みから人間が解放されることはおそらく永遠にない。