2021年12月07日 編集後記

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

12月6日はアイルランド独立戦争の休戦を取り決めた英愛条約締結の100周年だった。この条約によりアイルランド島南部の26県が英国から分離して、アイルランド自由国を建国することが決定し、1年後の1922年12月6日に発効して、アイルランドがついに独立した。その際に、自由国に合流せずに英国側にとどまることを選択したアイルランド島北部の6県が英領北アイルランドとなり、英国がEUから離脱した現在、改めて複雑な問題で混乱しているわけだが、1世紀を経てもおおいに揉め続けているのだから根が深い。これでは、100周年を手放しで祝うというわけにもいくまい。こういう状況を見ると、島国だからといって必ずしも同じ国、同じ国民としての一体感や連帯や統一性があるとは限らないことが今更ながらに実感される。日本列島の場合も、その歴史のいくつかの時点で分断の可能性があったわけだし、文化的には東西の異質性を強調する歴史家もいるが、政治的には決定的な分裂に向かうことなく、とりあえず列島全体が統一国家の形を保っているのは、世界史上で稀な幸運だと言えるのだろう。