新車のCO2排出規制、ルノーは目下の劣等生

投稿日: カテゴリー: 欧州自動車・モビリティ情報

欧州連合(EU)は域内で自動車を販売するメーカーに対して2020年から、新車の平均CO2排出量を乗用車で95 g/km以下、小型商用車で147 g/km以下に制限することを義務付けている。これは新車全体での目標で2024年まで変わらないが、各メーカーに対してはその製品の特性に応じてフリート平均のCO2排出制限目標が定められている。車重が大きいほど排出上限値は高くなるため、大型の高級車を専門とするメーカーなどの上限値は大きく、小型車を得意とするメーカーの場合は小さいという違いがある。2020年は初年ということで、欧州委員会も手心を加え、最も排出量の多い5%の車両は平均値の計算から除外し、また、排出量がゼロのフルEVは2倍に加算することで全体の平均値を引き下げるなどの弾力的措置を設けたが、こうした措置は2021年からは廃止されたり縮小されたりするため、条件はより厳しくなる。目標を達成できないグループには重い罰金が科されるが、2020年は規制を遵守できなかったのはフォルクスワーゲン(VW)のみだった。
ブリュッセルの環境NGO「Transport & Environment (T&E)」は、各グループの規制達成度を追跡調査しているが、2021年前半(1月から6月末まで)の実績では、ルノー・日産・三菱自が最下位だという。T&Eは各グループが自らに課された年間目標値に対して先行しているか遅れをとっているかを集計しているが、それによると、ルノー・日産・三菱自は3.4 g /kmの遅れをとっており、遅れの幅が最も大きい。これは、CO2排出削減の強力な手段であるフルEV「ゾエ」の売れ行きが悪化していることが一因だとみられる。ただし、ルノーは傘下ダチアの新型EV「スプリング」を今夏に発売しており、「日産・リーフ」の貢献にも期待できることから、通年では基準をクリアできると期待している。
T&Eも2021年はすべてのメーカーが規制を遵守できると楽観的に予想しているが、各車とも半導体不足の影響で生産が思うに任せない状況であり、前半で基準をクリアできなかったメーカーは最後の追い込みで苦戦を強いられる。
ルノー・日産・三菱自以外に目標値に対して遅れをとっているのは、現代自動車(3.3 g/km)、VW(2.7 g/km)、起亜(1.6 g/km)、トヨタとスズキ(1.0 g/km)、フォード(0.9 g/km)。
逆に目標に先行しているのは、ステランティス(2.1 g/km)、ダイムラー(3.0 g/km)、BMW(7.0 g/km)、ボルボ(25 g/km)、テスラ・ホンダ・ジャガーランドローバー(53 g/km)。
なお、排出削減が遅れているメーカーが進んでいるメーカーと組んでプールを構成することで規制をクリアすることも認められており、ホンダとジャガーランドローバーはEV専門のテスラとプールを組んでいる。また、ボルボが単独でも余裕をもって規制をクリアしつつあるのは、電動化に注力してきた成果でもあるが、同社の製品は車重が大きいために、上限値が大きいことも一因。