大統領府の世論調査事件の裁判で、パリ地裁に2日、サルコジ元大統領が証人として出廷した。憲法に抵触すると主張し、質問には一切返答しなかった。
この事件では、サルコジ政権時代に、大統領府が入札等の所定の手続きを踏まずに公費により多数の世論調査を行わせていたことが問題視されている。公金横領などの容疑で、当時のゲアン大統領府長官やビュイソン顧問など数人が起訴された。サルコジ大統領本人については、大統領は職務上の行為について責任を一切問われないとする憲法上の規定があり、訴追の対象とはなっていない。
検察側は捜査段階においてもサルコジ元大統領からの事情聴取はせずに立件した。裁判においても、元大統領の証人喚問は予定されていなかったが、原告に加わった汚職追及団体アンティコールの請求を認める形でブランシェ裁判長が召喚を決定。拘引状を出してでも喚問すると強い調子で述べたこともあり、元大統領は自ら出廷に応じた。
元大統領は法廷で、三権分立の原則から、大統領としての自分が職務について報告をする義務があるのは国民に対してであり、法廷に対してではない、と言明。三権分立を定めた憲法の規定を守るためにも、自分にはここで証言をする権利はない、などと述べて、質問に一切答えないことを正当化した。大統領は、事件当時の指揮系統のあり方などについて、裁判官が提起した質問に対して、自身に対して不当かつ過剰な追及がなされているとする遺憾の念を時折示したのを除いて、一切回答はしなかった。