2021年11月2日 編集後記

投稿日: カテゴリー: 編集後記

北アイルランド議定書をはじめとする欧州連合(EU)離脱合意について、英国がごねまくっている。英国近海の漁業権の付与などを通じて特にフランスに圧力をかけつつ、議定書などで規定された諸条件の再交渉を勝ち取るという作戦のようだが、この件については、英国側がゴールポストを動かしているという印象は拭い難い。
英国が離脱を決めたのは2016年で、その後数年を費やしてEUと長々と離脱条件を交渉した末に議定書を含む合意を結んだ。そもそも2016年の時点で、現在の首相であるジョンソン氏ら離脱支持派は離脱後の状況をあらゆる細部に渡って検討した上で、どのような合意を結べば、どのような影響が及び、どのような結果が生じるかを完璧に予測し尽くしておくべきだったのだのに、そうした最低限の準備もないままに無責任に離脱を決めた上に、期限が迫ってきたので拙速で合意に署名してしまったことが現在の状況を招いたことは明白だ。今になって、北アイルランドで問題が発生していると苦情を言われても、EU側が「何を今更。それは完全に想定内だろう」という気持ちになるのは当然だろう。
しかし英国がすごいのは、自分の側にどんなに落ち度があっても、国益擁護のためには恥も外聞もなく、あらゆる手段を動員して自国に有利な状況を強引に作り出そうとする点だ。汚い手を使ってでも、反則でも、いんちきでも、ともかく結果的に勝てばいいのだ、という非スポーツマンシップに徹するあたりは、ほとんどあっぱれと言いたくなる。日本なども少し見習いたい点だが、こういう国を相手にEUの外交がどこまで賢明、いや狡猾に立ち回れるかも注目したい。公正とか合法とかの理想的価値観にこだわっていては、米中露はおろか同格のはずの英国にも勝てないことを肝に銘じてせいぜい頑張ってもらいたいものだ。