ルーアン都市圏、UPMの再生紙工場売却を阻止へ

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ルーアン都市圏(ノルマンディ地域圏)は15日、フィンランドのUPM社が同都市圏内に所有する製紙工場「シャペルダルブレ」について、先買権を行使して買収すると発表した。UPM社が計画する売却計画を不適切とみて、一時的に自ら買収することを決めた。
この工場は、新聞用の再生紙を製造していたが、UPMは利益率が不十分であることを理由に、2019年9月より売却先探しに着手。2020年には売却決定を待たずに閉鎖を決めた。従業員のうち3人が、労組と環境保護団体等の支援を受けて事業継続を求めて活動を続けており、去る7月には、国内企業のSamfi-Invest/H2V Productがパプレック(リサイクル)と結んで買収案を提示。これは、4億5000万ユーロを投資し、廃棄物分別と再生可能水素の生産拠点に鞍替えするという趣旨だった。続いて去る14日には、環境サービス大手の仏ヴェオリアがフィーブル・エクセランス社(パルプ)と結んで買収案を提示。こちらは再生段ボール紙を製造し、エネルギーは有機廃棄物処理のバイオマス・コジェネ施設を併設して得るという内容だった(投資額は1億2000万ユーロ)。従業員側は、従来事業と連続性があり、実現可能性が高い後者の買収案を推したが、UPMは前者の買収案を採用することを15日に決定。後者の買収案は直前になり提出されたため精査ができず、前者は内容の上で遜色がないとの理由を挙げた。ただし、この決定には、ルメール経済相も同日時点で遺憾の念を表明しており、地元のルーアン都市圏も、従業員側の要望を後押しする目的で、自ら先買権を行使して工場を取得することを決めた。この場合、UPMによる正式な売却決定を経て、ルーアン都市圏側が先買権を行使する形になり、価格は国の部局が決定する規定になっている。今回の事例は、政府が国内産業の保護という観点から、介入の度合いを深めていることを示すものとも受け取れる。