富裕税ISFの廃止、投資拡大効果は得られず

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首相府下の調査機関フランス・ストラテジーは14日、マクロン政権の税制改革に伴う影響に関する調査報告書を提出した。富裕税ISFの廃止に伴う影響について、期待した効果は得られていないことを示唆する結果となった。
マクロン政権はISFを2018年に廃止し、代わって不動産資産税IFIを導入した。また、不労所得を対象にした30%のフラット税制も導入した。ISFの廃止においては、減税分が投資拡大に向かい、経済の活性化につながることが期待されていたが、報告書によると、そうした効果はこれまで見受けられていないという。ISF廃止の論拠の一つは、中小・中堅企業のオーナーが、ISFの納税のために会社の利益を配当に回し、このために企業による投資が阻害されるというものだったが、報告書によれば、廃止後にこうした企業が投資を拡大した形跡はなかったという。また、ISFの課税標準から保有する会社は除外されることから、会社のオーナーが会社を手元に温存し、企業の継承が妨げられるという論拠もあったが、この点についても、廃止の前後で変化は生じなかった。逆に、フラット税制の導入は、配当を大幅に増加させる効果があった。2017年の143億ユーロに対して、2020年には241億ユーロに増加。この増加は、自然人が所有する企業(特に中堅企業)において著しく、企業が投資よりも配当を優先する傾向を助長した。配当金が再投資などを経て経済の活性化に貢献した可能性はあるが、今のところはその効果を把握するデータは揃っていないという。
半面、ISF廃止の前後で、外国に転出する資産家の数は減り、国内に転入する資産家の数は増えるという効果はあった。2018年以来では、差し引き後で転入が上回る(2018年に340、2019年に280)状況となっている。ただ、報告書はこの点についても、数は多くないと指摘している。
フラットタックスの導入を経て配当金が増えたことで、全体として税収も増え、これはISF廃止に伴う減収を補填する役を果たした。他方、2017年には、配当金の半額が全世帯の0.1%(3万8000)に集中していたが、これらの世帯には2018年以降は配当の3分の2が流れ込むようになっており、フラットタックスの導入が富裕層にとって追い風になっている可能性がある。