10月8日、日本関連報道

10月8日、日本関連報道

3.その他事実報道
(1)ル・モンド紙(10月7日付、電子版)
「東京の人々、『飲み屋』の楽しみを取り戻す(A Tokyo, les habitants renouent avec les plaisirs des « nomiya », les bars de nuit)」(Philippe Pons(フィリップ・ポンス)東京特派員)

東京では、新型コロナウイルスの感染者数が顕著に減少しており、渋谷ののんべい横丁のような飲み屋街や新宿歌舞伎町のような夜の街にも活気が戻ってきた。

東京での一日当たりの感染者数は8月に6,000人を超え、医療機関が飽和状態に陥るほどだったが、10月5日時点では100人未満まで減少。開始当初は遅れが目立ったワクチン接種も、国民の7割近くが2回目の接種を完了するに至った。ただし、専門家は冬を前に再び感染者数が増加する恐れがあると警告している。

東京では現在、飲食店の営業時間は21時までとされているが、こうした制限もまもなく撤廃される見込みだ。これを前に客足は増えており、小さな店舗も営業を再開するようになっている。2020年以来数度にわたり発出された緊急事態宣言により、最も経済的被害を受けたのが居酒屋や飲食店だった。最新の緊急事態宣言は7月に発出され、こうした店におけるアルコール飲料の提供が禁止され、20時の閉店が求められた。しかし、実際のところはこうした指示は守られておらず、毎日新聞が8月に実施したアンケート調査によると、東京の飲食店の4割が、罰金を払いつつアルコール飲料を提供している、と答えている。実際、経済基盤のしっかりした飲み屋では、緊急事態宣言下でもかなり夜遅くまで営業が続けられ、アルコール飲料が提供されていた。

客が5-6人しか入れないような飲み屋で、人々は酔い、マスクを取り払い、年齢や立場を超えて本音を語り合う。日本のように形式を尊重する社会では、貴重な空間だ。酔っていれば、何を言っても、何をしてもほとんど大目に見てもらえるのだ。しかし、人々が飲み屋に求めているものは酔いではない。飲み屋は、働く人々が帰宅する前に、仕事場や家族内では話すことのできない自分の心の内面を吐露していく場所でもある。安倍夜郎の漫画『深夜食堂』は、こうした飲み屋の雰囲気を描き出した作品だ。

こうした人々の苦労話の聞き役を務めるのが、飲み屋の主人、特に女性の「ママさん」だ。こうした飲み屋を切り盛りするのは女性が大半である。「ママさん」はあまり若くはなく、大きな苦労をした経験がある人ばかりであり、明るく、優しい性格で、辛抱強く話を聞いてくれる存在だ。ほとんどの場合、こうした女性が飲み屋を開くのは、何らかの挫折がきっかけだ。会社勤めから逃れるために、バーを開く男性もおり、作家デビュー前の村上春樹がその一例だ。

様々な人たちが、一人で、また何人かで連れだって飲み屋にやってくる。それは、酔いを求めて、というよりも、ママさんや、カウンターでたまたま隣になった人との会話を楽しみ、くつろぐためなのだ。飲み屋を訪れる人のほとんどが馴染みの客で、緊急事態宣言中には、贔屓の店が潰れないようにお金を出し合った人々もいる。谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』で述べたように、人々の手によって磨かれ、その垢に培われてきた飲み屋の木でできたカウンターは、こうした店の魅力だ。そして日本の人々はようやく、こうした飲み屋での楽しみを取り戻しつつある。

(2)ウエスト・フランス紙(10月7日付、電子版)
「ビデオゲーム:作曲家のすぎやまこういち氏、90歳で死去(Jeux video. Deces du compositeur Koichi Sugiyama a l’age de 90 ans)」(Marion Bargiacchi(マリオン・バルジャッキ)記者)

ドラゴンクエストシリーズの音楽を担当したことで知られるすぎやまこういち氏が9月30日に90歳で亡くなったことが明らかにされた。同氏はまた、物議を醸す立場と発言でも知られる。

同氏は、ドラゴンクエストシリーズのため500曲以上を作曲・編曲したことで知られ、1987年8月20日には初のビデオゲーム音楽のコンサートをサントリー・ホールで開催した。また、ビデオゲーム音楽をモチーフとした交響曲を最初に作曲したのもすぎやま氏で、その後、植松伸夫氏もファイナルファンタジーの音楽で交響組曲を発表した。すぎやま氏はまた、1995年にドラゴンクエストのためにバレエを作曲した。

2004年には、プレイステーション2向けのドラゴンクエストVの新バージョン発売に際して、全ての楽曲を交響楽団によって演奏させた初の作曲家となった。ビデオゲームだけでなく、すぎやま氏は、東京・中山競馬場(原文では、自動車レース場)のファンファーレの作曲でも知られる。彼の最後の作品は、今年発売予定の『ドラゴンクエストXII選ばれし運命の炎』の音楽だった。

すぎやま氏は政治的に物議を醸す立場をとっていた。人物とアーティストを分けて考えるべきなのか? 追悼の言葉が集まる一方で、そのような疑問が生じるのは確実だ。すぎやま氏は、南京大虐殺を否定する修正主義者の1人だった。彼はまた、2007年にワシントン・ポスト紙に掲載された意見広告(慰安婦問題について強制性はなかったとし、アメリカ合衆国下院121号決議案採択阻止を目指す目的)にも参加していた。Kotaku(英語によるビデオゲームに関するブログ)によると、すぎやま氏は2012年に「日本人と反日との間の内戦」があると発言。福島第一原発事故後に原発をすべて解体すべきという原発反対派の求めも批判した。原発に代わる代替エネルギーに関する提案がなく、日本の防衛を損なうというのがその理由だった。

すぎやま氏は2015年にチャンネル桜の番組「日いずる国より」において反LGBT発言をしたが、3年後にそれがツイッターにより拡散された。ドラゴンクエストシリーズのパブリッシャーであるスクウェア・エニックスはその際、「個人の見解は、会社の見解・活動を代弁するものではありません。スクウェア・エニックスは様々な信条、性的指向、性同一性を有するスタッフを多く採用しています。ポリシーの問題として、私たちはあらゆる差別・いやがらせを容認しておらず、世界中のすべての人の性的指向・性同一性の多様性を尊重しています」との声明を出した。当時は、スクウェア・エニックスがすぎやま氏との関係を断つべきかどうかという議論がSNS上で行われた。

しかし、すぎやま氏とスクウェア・エニックスの関係は解消されず、同社は、すぎやま氏の死に対する弔辞を同社の公式サイト上に掲載した。著名なゲームクリエイターである桜井政博氏や、ビデオゲーム音楽作曲家の古代祐三氏も、すぎやま氏の氏を悼むツイートを流した。スクウェア・エニックスはまた、すぎやま氏の追悼会を開催する予定で、近く日程を発表する。