ルノー、まだまだ脆弱な財務状況

投稿日: カテゴリー: 欧州自動車・モビリティ情報

10月7日付の仏経済紙レゼコーは、新型コロナウイルス危機に直面していた企業を支援するために仏政府が導入したPGE(公的保証の伴う銀行融資の特別制度)の返済状況を報じた。PGEの適用で経営困難に陥っているというイメージを嫌がる大手企業もある。また様々な制約措置(PGEを付与されている期間の配当の停止、企業買収の禁止など)もあることから、返済能力がある企業の中にはすでに返済を実施した企業もある。未返済の企業も返済に向けてリファイナンスを探っている。
仏自動車大手のルノーは2020年6月に、PGEを利用して50億ユーロの融資を確保した。この融資により経営破綻を回避したというほどルノーの財務状況は悪化していた訳ではない。しかし、2020年初めには、他の自動車メーカーの経営状態が良好であったのに対して、ルノーはすでに資金面に問題があったことが指摘される。2020年春からのロックダウン開始により工場と代理店が休業に追い込まれ、資金不足が深刻化、さらに欧州中央銀行(ECB)が銀行の株主配当を禁止する措置を導入したことも、銀行子会社のRCIからの配当をあてにしていたルノーにとって痛手となった。同社は2020年3月時点で一応、103億ユーロの流動性準備金を確保していた。しかしすでに投機的格付けに接近しつつあった格付けをさらに悪化させるリスクがあるため、追加融資を受けることが困難な中、PGEの恩恵を受けることになった。
PGEの枠内で受けた50億ユーロの融資のうち、ルノーは2020年8月に20億ユーロ、9月に10億ユーロ、12月に10億ユーロと合計40億ユーロを引き出した。今年8月にはルノーはリファイナンスにより10億ユーロの返済を実現したが、融資返済を早急に実現できるほど業績は改善していない。アナリストによると、ルノー自動車部門の純債務は27億ユーロの高水準にあり、さらにサプライヤーに対する債務を加算するとこれは40億ユーロまで上昇する。他の自動車メーカーの大半がキャッシュフローを黒字化する中にあって、ルノーはまだまだ脆弱な財務状況にある。