インド市場で粘るルノー

投稿日: カテゴリー: 欧州自動車・モビリティ情報

仏伊自動車大手ステランティス傘下の仏シトロエンは9月16日、インド及びラテンアメリカ市場でのシェア拡大を目的として、2022年初めに新型SUV「C3」を投入することを発表した。これは全長が4メートル未満のコンパクトSUVだが、最低地上高が高く、悪路の多い地域に適したモデルだという。
シトロエンのコベCEOは欧州での販売を伸ばすのと並行して、欧州域外での販売の割合(現在は15%)を2025年までに30%へ引き上げることを目指しているという。同CEOはインドの年間新車販売台数が2025年までに400万台に達して、日本を抜いて世界3位の自動車市場に躍進する可能性があると予測した上で、参入が難しい市場だとも強調した。
17日付けでこの情報を報じた機会に、仏レゼコー紙は、競合のルノーがインド市場で進めている戦略について取り上げた記事も掲載した。
ルノーはインドに10年前から参入しており、3%の市場シェアを獲得して、欧州メーカーとしては首位につけている。しかしインド市場ではマルチ・スズキ・インディアが50%近いシェアで他を圧倒し、現代自動車が20%近いシェアでこれに次いでおり、他のメーカーは苦戦している。米GMやフォードはすでに撤退を余儀なくされた。
ルノーは2012年に低価格車「ダチア・ダスター」をルノーのブランドで発売し、2015年にはチェンナイにあるルノー・日産アライアンスの工場で現地生産される小型SUV「ルノー・クウィッド」が一定の人気を得ることに成功して、2016年と2017年に10万台以上の販売を記録した。しかし、マルチ・スズキと現代自動車による価格競争のせいで、「クウィッド」の販売はその後の3年間は低迷した(2018年に7万6000台、2019年に6万5000台、2020年に4万3000台)。2020年に新型バージョンを投入したことで、少し弾みがつき、現在は月間に4000-5000台の販売台数を維持しているという。現代自動車が小型車から撤退したことも追い風となった。
ルノーはまた、2019年に「Triber」、2021年には「Kiger」を投入した。いずれもチェンナイ工場において「クウィッド」と同じプラットフォームを用いて生産されている小型SUVだが、「Triber」は全長4メートル未満ながら7人乗りで、農村部で売れ行きがよく、2020年の新型コロナウイルス危機や現在の半導体不足にもかかわらず、これまで累積で7万台の販売を達成した。2021年3月に発売したばかりの「Kiger」は斬新なデザインが特徴で、1万9000台の販売を記録。ルノーの現地子会社の責任者は、「Kiger」はポテンシャルが大きく、普通なら2倍売れてもおかしくないが、4-6月に新型コロナウイルスの感染拡大により自動車販売がほとんど停止した上に、またチェンナイ工場でも衛生条件や賃金水準をめぐる紛争でストが発生したことなどが、販売の障害になったと説明している。
平均販売価格は「Triber」が6500ユーロ、「Kiger」が9500ユーロで、ルノーは2021年に8万-8万5000台を販売できれば、損益均衡点に近づき、来年には利益も見込めると踏んでいる。
ルノーはインド市場で2022-2023年に4%以上のシェアを確保することを目指している。同社ではインド市場全体の規模について、現在の年間販売台数は300万-320万台だが、2024-2025年には400万-500万台に達すると予測した上で、自社の年間販売台数を16万台程度に引き上げることを目標に掲げている。インドではコンスタントに新型車を投入しないと競争に生き残れず、ルノーも適切な時期が来たら一連の新型モデルを披露する見通しという。