ルノー、電動化戦略を専門メディアに説明

投稿日: カテゴリー: 欧州自動車・モビリティ情報

ルノーは7月16日の専門メディア向け会議で、「eWays」と名付けられた電動化戦略を提示した。これに先立って、欧州委員会は14日、欧州連合(EU)が2050年に二酸化炭素排出量実質ゼロ(カーボンニュートラル)を実現するための一連の対策「Fit for 55」を発表し、自動車部門に関しては、2030年に、ハイブリッド車を含む内燃機関エンジン車の販売を禁止する方針を示した。この方針は、電動化への移行でハイブリッド車を重視するルノーの戦略にはそぐわないものである。
ルノー・グループのエンジニアリング責任者であるジル・ルボルニュ氏は「プラグインハイブリッド車(PHEV)が2035年以後も強化され続けるように頑張って要求する」と述べた。同氏は、欧州委員会が2018年には2030年までの新車の二酸化炭素排出量削減目標を37.5%としていたのに、今回はいきなり55%に引き上げたことについて「急激すぎる。これほど短期間に(メーカーが)方針を変更することは非常に難しい」と批判した。
こうした状況で、将来的に修正の可能性はあるが、ルノーの電動化戦略には3つの目標がある。
目標1:バッテリーのバリューチェーンをコントロールする
「電気自動車(EV)のエコシステム、特にバッテリーのバリューチェーンに、より深く入りこむ」ことをルボルニュ氏はあげた。そのために、ルノーは仏スタートアップのベルコールおよび中国のエンビジョン-AESCとの提携を決めた。ベルコールとは2030年までに仏国内で50GWの生産能力を備えた大規模工場を開設することを目指す。エンビジョンは2024年からドゥエに大規模工場を開設する。ルボルニュ氏によると、いわゆる「バッテリーのエアバス」構想に基づくACC(サフトとステランティスの合弁)との交渉も続いている。
目標2:NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)バッテリーから全固体バッテリーへ
バッテリーの技術については、ルノーはLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーではなくNMCバッテリーを選択した。ルボルニュ氏によると、LFPはNMCよりバッテリーセルのレベルで10-15%低コストだが、エネルギー密度がより低いため、より重く、嵩張るという欠点がある。またバッテリーのリサイクルという点でも、NMCのほうが有利だという。NMCにはコバルトをはじめとする高価値の材料が含まれているのに対して、LFPの材料自体には高価値はない。そのため、LFPのリサイクルはコスト負担を招くが、NMCのリサイクルは価値を生むという。
しかし、ルノーの2030年までの野心は、全固体電池を開発することにある。先端エンジニアリング責任者のソフィー・シュミットラン氏は、全固体電池の開発では、電解質にポリマーを用いる方法と、セラミックスを用いる方法の2種類が検討されており、どちらが勝つかはまだ分からない状況だとした上で、全固体ポリマー電池がうまく行けば、2030年までに工業化も可能だと述べた。
目標3:アキシャルフラックスモーターの工業化
電動化戦略のもう一つの重要な要素はモーターで、ルノーは社内で巻線形回転子を搭載した非同期モーターの開発を進めている。ルノーのモーター専門家エドゥアール・ネーグル氏は、「非同期モーターの改良を続けており、新世代製品では銅の使用量が45%少ない」と説明した。
これと並行して、ルノーはスタートアップのWhylotと協力し、アキシャルフラックスモーターを開発している。ネーグル氏によると、この技術はモーターの効率を改善し、質量とコストの削減を可能にする。アキシャルフラックスモーターはまずハイブリッド車に搭載される予定。将来的にフルEVに使用する可能性もあるというが、当面の課題は大量生産を困難にしている機械的な制約と熱的な制約の解決だという。

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