オランダの総選挙で極右政党が圧勝した。反移民、反イスラム、反EUなどの立場を掲げる政党が、多くの欧州諸国で勢いを増している。こうした現象の背後に、情報操作、陰謀論、大衆扇動、移民やイスラム教徒のスケープゴート化、人種差別などネガティブな要因が働いていることを指摘することは容易いが、それだけでいいのだろうか? いたずらに「右傾化」や「極右化」を警戒したり批判するのではなく、極右の台頭の背後には、やはり何らかの「現実」があるのではないかと問うてみる必要があるだろう。それは欧州の民主主義の理念にとっては不都合な現実かも知れないが、理念が現実と食い違う場合に、理念を優先して現実を無視するのでは、かつてのマルクス主義のような過ちをおかして、かえって窮屈で息苦しい全体主義的な社会を生み出してしまうのではないか(地獄への道は善意で舗装されている)? むしろ理念に抵抗する現実を直視し、現実に鑑みて理念を修正するのが正しい態度だろう。欧州と価値観を共有しない地域からの移民受け入れを支持する考え方と、EUが称揚してきた理想的欧州像の間には、もちろん共通のイデオロギー的基盤があり、それは北米的なポリティカルコレクトネスやウォーキズムとも共鳴し合う。そのようなイデオロギーをこそ脱構築すべきときが来ていることを、極右の台頭は示唆しているのではないだろうか?