2月6日の仏レゼコー紙に掲載された中国人作家ファン・ファン(方方)のインタビューが面白い。武漢市を拠点とし、2020年に新型コロナウイルスが発生した折には、ロックダウン下での現実を伝える『武漢日記』 をオンラインで発表して注目されたファン・ファンだが、その後は当局による検閲で作家としての活動を封じられているという。彼女は、習近平体制が進めた「ゼロコロナ政策」と、かつての「スズメ撲滅運動」 (四害駆除運動で特にスズメが主要な標的とされた)や、自らも駆り出されたという「ハエ撲滅運動」との共通性を指摘し、当初から信用できなかったと述べている。毛沢東が大躍進政策で推進した「スズメ撲滅運動」は生態系の破壊を招き、これが数千万人の死者を出した飢饉を引き起こした。ファン・ファン自身が体験した「ハエ撲滅運動」もいたずらに混乱を招いただけで、ハエを減らす効果はなかったという。「ゼロコロナ政策」も人民を苦しめたわりに所期の目的を達成したとは全く言えない。ゼロ、どころか数億人が感染したとみられ、公式発表にはあらわれない死者も多いという。こうした無謀な「撲滅運動」を展開する当局に対して、最近は珍しく「白紙運動」のような抗議行動が起きたが、中国がこれを機に大きく変わるかといえば、そんなことはない、というのがファン・ファンの見解だ。中国には官僚を敬う長い伝統があり、中国人は物質的な条件が満たされれば、当局への抗議をやめて、また元の通りに官僚に従順に従うだろうという。 抗議運動を経て変革が起きる、というのは中国人の心性を理解しない西欧の見方にすぎないとファン・ファンは指摘している。自らは、作家活動を検閲されつつも、新たな作品を準備中という。このような冷徹な精神の持ち主がいる限り、中国文学は撲滅されないと信じたい。