イタリアでドラギ政権が倒壊した背後にロシアの画策があったのではないかとの疑惑が浮上している。同政権の脆さは、もちろんイタリアの慢性的な政治的不安定の反映であって、ロシアが策動しようがしまいが、挙国一致的な結束が長続きしない兆候は最初からあった。しかし、ロシアの策略が結束の崩壊を早めた可能性はおおいにある。フランスの2017年の大統領選挙などでも、マクロン候補(当時) をめぐるフェイクニュースの流布があり、これはロシアによる情報撹乱だったとみられており、欧州の政治危機の裏にロシアの影をみてとることは、いわゆる陰謀論ではない。イタリアにもフランスにも親ロシア派・親プーチン派の政治家はたくさんおり、そうした人脈を通じて、陰謀は現実に行われている可能性が極めて高い。もちろん似たような策略は米欧諸国も展開しているに違いないが、どこまで躊躇なく、えげつない手段を用いることができるかが、ロシアの強みなのだろう。正義とか倫理とかに縛られず、文化とか文明とかに毒されていない思い切りの良さが、こういう分野では利点となる。まことに羨ましい限りであり、米欧もみならうべきだろう(これはもちろん皮肉だけれど)。ただし、国際的信用は一回失ってしまうと、1世紀や2世紀では取り戻せない。ロシアは近視眼的な利益に目を奪われて、永遠のオオカミ少年になろうとしているのだろうか。