ANSES(国立食品環境労働衛生安全庁)は8日、地下鉄道における空気の質に関する鑑定報告書を提出した。粒子状浮遊物質による汚染が顕著であることを問題視し、改善を勧告した。
ANSESは2019年8月に保健省より依頼を受けて、この報告書をまとめた。フランスでは、パリを含む7都市圏で地下鉄道が整備されている。地下鉄道の構内では、主にブレーキ時に発生する粒子状浮遊物質による汚染が顕著だが、規制は存在せず、汚染状況の把握もほとんど行われていない。ANSESは今回の調査により、PM10及びPM2.5の平均濃度が、市中の外気と比べて3倍も高いことが明らかになったと指摘。その上で、汚染状況の計測や把握の努力が不十分であり、健康障害を起こす可能性についてもデータが不足していることから判断が難しいが、改善の努力を続ける必要があると強調。車両の更新、ブレーキシステムの改善、換気の改善をそのための主な手段として挙げた。他方、数値規制の導入は、十分な疫学的根拠がないため、現状ではできないが、世界保健機関(WHO)の基準値に沿った改善が必要だと勧告し、それよりは緩い欧州連合(EU)の2008年の基準値に沿った改善は必須だと指摘した。これらの基準値は、曝露時間に応じた濃度の上限を定めるもので、EUの基準値はPM10のみについて設定されている。WHOの基準値は、例えば1日2時間の曝露曝露なら濃度を1平方メートル当たり80マイクログラムと定めている。