「法の支配」違反により、EU内でとりわけ非民主的とみなされているハンガリーのオルバン首相が総選挙で勝利して、政権を保持した。西側の欧州諸国から見れば、苦々しく苛立たしい結果だろうが、左派から極右までの大同団結を実現した野党勢力との対決で圧勝したのだから、これはハンガリー国民の明確な意思表示であり、(衆愚政的な側面も含めて)民主的な選択と受け止めざるを得ない。ただし、この選択はハンガリーの孤立化につながる可能性が強いとみられている。オルバン政権は欧州においてセルビアと並ぶ親ロシア派であり、表面上はEUの対ロシア制裁とウクライナ支援に反対してはいないが、一切の積極的貢献を拒否している。ところが、これまで「法の支配」違反でハンガリーと共闘してきたポーランドは、対ロシア制裁とウクライナ支援に関してEU内で最も積極的な姿勢をとっており、ハンガリーとの連帯に亀裂が入り始めた。オルバン政権下のハンガリーはウクライナ危機への対応でも歴史的な汚点を残して、爪弾き者になりそうな気配だが、民主的な決定である以上、それもまたよかろうというほかない。独自の方針に固執する一部の加盟国を獅子身中の虫のように抱え込みつつ、緩やかに変化していくのが欧州統合の本来の姿なのだろう。アーメン(so be it)。