14日付けの仏ルモンド紙は「いかにして戦争が世界秩序を激変させるか」と第一面で報じた。ウクライナ情勢はまだ流動的であり、14日からの停戦交渉は有望だとの観測もあるが、どのような形で決着するにせよ、今回のロシアによるウクライナ侵攻は、第二次世界大戦後に成立した世界秩序の根本的なリセットを強いる大事件だとの感触が強い。大戦以後で初めての欧州での戦争、と言い方もみかけるが、これは不当で、旧ユーゴスラビアでの戦争を含めて、この75年間に欧州で武力紛争がなかったわけではないが、核兵器保有国が直接に他国に侵攻するという事態はたしかに例外的だ。ユダヤ人を大統領とするウクライナが「ナチス」だと強弁するプーチン大統領とロシアの主張は外から見ると支離滅裂だが、世界大戦期からソ連の崩壊を経て 現在に至るロシアの歴史的な道筋の中では、それなりの一貫性があるのだと専門家は指摘している。その「一貫性」はもちろんロシア民族主義に固有の誇大妄想・被害妄想的な論理に基づいており、西欧社会には到底受け入れ不可能だが、ここまで異質な文明と隣合わせでいながら、グローバル化という耳障りの良いスローガンにまんまと乗せられて、経済的な交流や通信ネットワークの発展を通じて、その異質性を徐々に馴致できるかのように勘違いしてきた西欧や自由主義圏の愚かしさは、今や深い反省を必要としているのだろう。ロシアとそれを支援するような国々がある限り、平和ボケしてはならないし、ナイーブであってはならないということが再確認されたのはこの危機のせめてもの収穫だ。誰しもが、決して終わることのない戦時体制を生きていることを常に自覚しておくべきだろう。