パリ南方のオルリー空港を結ぶ自動運転列車「オルリーバル」の事業継続が危ぶまれている。2024年のパリ五輪後に廃止される可能性がある。
オルリーバルは1991年に営業を開始。自動運転システムを採用する公共交通機関としてフランス最古参の部類に入る。オルリー空港より、RER(郊外連絡急行)B線のアントニー駅までの7kmの区間が、6-7分間隔で運行されている。料金が片道9.3ユーロとかなり高い上に、RERでパリ・アントニー間の料金を支払わなければならないこともあって、パリ市内までの交通手段としてよく利用されているとは言い難い。2024年には、パリ五輪にあわせて、メトロ14番線(自動運転)がオルリー空港まで延伸されることになっており、さらにオルリー空港からRERB線方面などにつながるメトロ18番線の建設計画も進められていることから、将来的にオルリーバルの需要はなくなるのが確実になっている。2019年の年間利用者数は250万人と、既に開業時に期待された480万人に比べて少なく、足元の新型コロナウイルス危機下では利用者はほとんどいない状況に陥っている。
地元の自治体では、7km区間に3駅を増設し、地域住民の移動手段に鞍替えして運行を継続するよう働きかけている。自治体側では、インフラを取り壊す費用が1億4000万ユーロかかるのに対して、改装には8000万ユーロで済むとの試算を示しているが、パリ首都圏(イルドフランス地域圏)の公共交通機関を統括するIDFMでは、実際には2億ユーロの費用がかかるとみて、再整備事業には慎重な構えを示している。