美しく強き機織りの猫

投稿日: カテゴリー: 大熊猫集団の井戸端会議

筆者は猫好きで、朝起きると猫のビデオを何本か見ないと目が覚めた気がしないのだが、最近そうした朝のチェックリストに加わったのがスコティッシュフォールドのMaximus Textoris Pulcherくんのインスタグラムである(https://www.instagram.com/maximustp16/)。これは誰かというと、ベルギーのバルト・デウェーフェル首相の猫である。猫ちゃんそのものも可愛いが、Maximusくんの写真には毎日バンデシネ風の吹き出しにコメントが添えられていて、これが「吾輩」風でなかなか皮肉がきいていて乙である。
先日のワールドカップ、ベルギーvs米国戦は、(恐らく)トランプ大統領の電話一本により、米国のバログン選手に前の試合で与えられたレッドカードが取り消され、同選手が出場可能となったことが大きな議論を呼んだが、試合前のMaximusくんのコメントは、「レッドカード?それでも出るもんニャ!」というものであった。ご存じの通り、ベルギーは4対1と圧勝し、ダメ押しの4点目を入れ勝利を確信した選手たちは、電話をかけるポーズに続いて「トランプダンス」を踊った。その翌日朝のMaximusくんは、どこから見つけてきたのかトランプ大統領によく似た人形を抱いて、眠そうな顔をしながら、「昨日の夜はとってもよく眠れたニャ。君はどうだったかニャ?」と呟いたものであった(ちなみにMaximusくんの腕の下で、トランプ大統領によく似た人形は、どうしたわけかArrrggh!!と苦しそうな叫び声をあげるのであった)。
Maximusくんのフォロワー数は現時点で23万4000で、デウェーフェル首相の22万1000を上回る大人気。これは「政治猫」の先輩である英国首相官邸「ネズミ捕獲長」ラリーの10万1000(https://www.instagram.com/larrythecatforpm/?hl=fr)をも大きく上回る数である。
デウェーフェル首相は、オランダ語系フランデレン地域の「新フラームス同盟」の党首を2004年から20年以上にわたり務め、長らくアントウェルペン市長も務めた人物。「新フラームス同盟」は本来、フランデレン地域の分離独立を要求するような過激な主張で知られ、2010年の総選挙以来下院で第1党の座を保持してきたが、他の政党に敬遠されていた時期も長かった。最近は政権を目指して現実的な路線を選び、ベルギーではお決まりの長い長い連立交渉の末に2025年、ようやく政権にたどり着いた。コンセンサス確立の苦労を知る人物だけに、自らのイメージ作り戦略の中でMaximusくんの手も借りたい、というアイデアに至ったのかもしれない。Maximusくんのアカウントも、2025年の首相官邸への引っ越し後に設置された。
ちなみに「Maximus Textoris Pulcher」という名前はラテン語で、直訳すれば「最強の美しき機織り」とでもなるが、これはデウェーフェル首相の名前(De Wever、「機織り」の意。英語で言えばWeaver、独語で言えばWeberである)にひっかけたものであるという。インスタグラムのポストにおける吹き出しは、「新フラームス同盟」に属する首相だけにすべてフラマン語で書かれているが、ポストそのものタイトルはフランス語で書かれていて、ベルギーらしい言葉の住み分けがされているのも面白い。
さて、米国戦の勝利を祝った首相はトルコ・アンカラのNATOサミットに向かった。この日の二人のインスタグラムのポストはこんな具合である。首相:「アンカラで性格のいい猫ちゃんに出会いました。Maximusには言わないでね。」(出会った子猫をナデナデしながら)(https://www.instagram.com/p/DaffThBoJ9G/?hl=fr)。Maximus:「今日はNATOのサミットなるものの夢を見たニャ。NATOというのは新しいパテのブランドかニャ?」(https://www.instagram.com/p/DahdPUZu2-k/ フラマン語ではNATOを「NAVO」、猫用フードを「natvoer」というのでこれをかけたダジャレであるらしい)。