真の敗者

投稿日: カテゴリー: 大熊猫集団の井戸端会議

筆者が本稿を執筆している時点(6月22日)では、イランと米国及びイスラエルの戦争は一応終結した。両国が調印したのは最終合意ではなく覚書なので、再び戦闘が再開される可能性は残っている。また、米国が望んだようなイランの政治体制の変化は起こっておらず、むしろ現体制は強化されたかのように見える。
イランの核兵器開発に関しては今後の交渉に任されるので、それの行方次第ではあるが、覚書の内容から見ると、米国とイスラエルが目指したイランの核開発能力の破壊は実現されておらず、筆者は、いずれイランは核を持ってしまうだろうと思っている。ロシアによるウクライナ侵攻の際に欧米が直接介入を躊躇ったのは、ロシアが核を持っているからであるのは明らかであり、新興国の多くはそれをよく理解しているだろう。そうは言っても、核保有国側は非保有国による核武装に対する警戒を今後さらに強めることになると思われるので、簡単なことではないだろうが。ただし、イランは、今回の紛争を通じて、ホルムズ海峡封鎖という、核とは比べようもなく安上がりで、世界全体に影響を与えられる武器を手にしたと言える。こうしてみると、今回の戦争の戦略的勝者はおそらくイランであろう。米国が得たのは、高い代償を払った戦前への回帰でしかないという気がする。一方、真の敗者はイスラエルであることは明らかだ。イスラエルは、米国と共にイラン攻撃に踏み切ったが、戦争の最終局面では、同盟国の米国からレバノンの親イラン勢力であるヒズボラ攻撃停止を命じられ、ヒズボラからの攻撃に反撃したら、イランとの合意形成を邪魔するのかと非難されるに至った。トランプ大統領は、イスラエルの安全保障よりも北米で開かれているサッカーのワールドカップの成功を取ったようにさえ見える。筆者は、トランプ大統領ならば、たとえ同盟国であれ、米国の(というよりも自らの)利益にそぐわなければ、切り捨てるだろうと常々思っていたが、それが現実のものとなったようだ。