西アフリカのセネガルを起点に、アフリカの未電化地域に電気と通信を届けるTUMIQUI Projectを立ち上げたシュークルキューブジャポン。次のステップとして、アフリカの農産品を冷蔵・加工・輸出し、自律的で持続可能な現地産業を育て、国際市場へとつなげる新たな挑戦を進めている。前回に続き、代表の佐藤さんに話をうかがった。
西アフリカのセネガルを起点に、アフリカの未電化地域に電気と通信を届けるTUMIQUI Project(ツミキ プロジェクト)を立ち上げ、診療所への電力・通信の導入、学校でのデジタル学習環境の構築に取り組むシュークルキューブジャポン。現在は、アフリカの農産品を冷蔵・加工・輸出することで、自律的で持続可能な現地産業を育て、国際市場へとつなげる新たな挑戦を進めている。「アフリカの未電化地域に電気と通信を届けるTUMIQUI(前編)」(2026年1月19日付掲載)に続き、代表の佐藤さんに話をうかがった。
これまで、未電化の診療所や学校へTUMIQUI Smart Kit(ツミキスマートキット)を納入するという事業をしてきましたが、次のステップとしてマンゴーの事業(1)に取りかかっていますね。とても面白い事業だと思いますし、商船三井やダイキン工業といった大きな企業も賛同して一緒に取り組んでいます。これまでの社会的事業と、これからのビジネスは違うものなのでしょうか。
今までの社会的事業が非常に大事で、それがあったからこそ賛同してくださった企業が多いのです。なので、これまでの社会的事業とビジネスは両立するものだと考えています。
アフリカでは、教育省とか保健省といった政府の資金に期待できず、学校も電気代を払えないという状況です。セネガルでは、学校の電気代を生徒の親から集めているのですが、払えない人もいる。だから、電力が使えるよう設備を整えてもお金が払えないから電気を使えないという事態が起こるわけです。でも、太陽光発電なら毎月の電気代がかからないというメリットがある。我々もユニセフ(国連児童基金)とのつながりができたので、TUMIQUI Smart Kitを他の国にも展開できる状況が整ってきました。
保健・医療分野への支援は、今、国際協力機構(JICA)が再開しようとしています。我々も、母親の命を救いたいという気持ちは変わらないので、そこは一緒にやっていきたい。渋沢栄一の『論語と算盤』の論語、つまり道徳を追求する活動です。
マンゴーの事業に関しては、国連世界食糧計画(WFP)の方と意見交換したときに、学校給食を冷やす冷蔵庫がないという話を聞いたのがそもそもの始まりです。我々は40フィートの海上コンテナに、太陽光パネルを12枚載せたものをデータセンターとして運用しているのですが、それを冷蔵庫にしたら使えるのではないかという発想が浮かんだのです。TUMIQUI Power Digital Solutions(ツミキ・パワー・デジタル・ソリューション)という、学校を電化したサイズのもので冷蔵庫を動かせることが分かったのですが、その事業を進める中で、セネガルのカザマンス地方出身の弊社従業員が、「ムッシュー佐藤、マンゴーだよ!」と言ったのです。初めは、「マンゴーってなんのことだ?」と思ったのですが、食べてみると美味しい。しかもセネガルのマンゴーは、肥料を与えず完全な自然農法で作られたオーガニックマンゴーです。糖度も20%を超えるものがあるなど非常に甘い。なので、これはビジネスになるのでは……と思ったわけです。
なぜ、今までビジネスにできていないかというと、電気がないから冷やすことができず市場に届けられないし、加工することもできないからです。マンゴーは熟れ始めるとあっという間に腐ってしまうので、セネガルでできるマンゴーの半分は捨てられています。だから、我々が今までやってきた電気と通信のツールでコンテナを動かせば、商業化できそうな気がしました。冷蔵庫を販売するという選択肢もあったのですが、ダイキン工業の担当者から、「(マンゴー生産者が)冷蔵庫を買って3日しかもたないものが10日もつようになっても、その先で売れる金額が安かったらペイできませんよね」と言われたんです。それももっともなので、欧州や日本に売ってはどうかと考え、試験的にセネガルでピューレに加工しました。そして、セネガルと日本の植物検疫検査を通過したピューレを沖縄県のマンゴースイーツ専門店で加工して、2025年8月の第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)で発表したところ、非常に評判が良かった。
今までは、病院や診療所に電気を通すことで人々の暮らしを良くしようとしてきました。でも今度は、10トンサイズの工場を通じて地域に電力を提供し、そこで雇用が生まれたら母親も自分でお金を稼いで設備が整った病院に行けるのではないかという、間接的に社会課題の解決に貢献できるのではないかと思ったのです。そして、コールドチェーン(低温物流)がないところで、産品を輸出するというロールモデルがあると、ビジネスになりそうだな、という感じがしてきて、いろいろな企業が賛同してくれるようになりました。

太陽光電源による冷蔵倉庫・食品加工・デジタルキオスクのイメージ(写真提供:シュークルキューブジャポン)
もちろん生マンゴーもいいのですが、やはりピューレに加工すると3日しかもたないものが数カ月ももつわけです。さらに、冷凍なら1年はもちます。また、皮が色焼けしていたり、少し傷が付いていたりとか、見た目が良くないものは日本に輸出しにくい。そこで、皮の状態はあまり美しくなくても中身は美味しいのだから、中身だけを加工するのがいいという結論に達しました。
2025年8月にセネガル産業・通商省の大臣と交わした覚書(MOU)は、太陽光を使ってコールドチェーンを構築し、マンゴーを加工して輸出するという内容です。セネガル政府としては、産品をそのまま輸出してフランスで付加価値をつけて販売されることには抵抗があるわけですよね。セネガルで加工したものを輸出する、高付加価値で売る、ということをしたい。それに、他の国際機関も、今までコールドチェーンがなかったところにコールドチェーンを構築するという我々の活動に注目してくれている。我々も、突然このビジネスを始めたわけではなくて、診療所や学校に電力・通信を導入するという実績があって、つまり「論語」があったからこそ、今「算盤」、つまりビジネスなんです。そこに、皆さんに共鳴していただいている。
今まで診療所や学校の電化に取り組んでいたのに、他社との協業で、突然マンゴー事業に手を出したり、最初はマンゴー加工と冷蔵庫の導入と言っていたのに、急にデジタルキオスク(自立式デジタル情報端末)の設置事業に乗り出したりしているので、周囲から結構驚かれています。でも、プリンティングサービスは重要なんですよ。セネガル人は、自宅にプリンターがなかったり、フランス語を書けなかったりするから、市役所のそばに代書屋さんとプリンティングサービスがあるんです。けれども、地方に行くとそもそも電気がない。我々は、それをセットでやろうとしている。それに加えて、マンゴージュースがあれば売れるだろうと。
学校で行ったように、最終的には電波のない地域にはアンテナを立てて通信をつなぐのですが、そうすると、分散電源で飛び石のように通信がつながり、コールドチェーンで物流がつながる、そうした事業に取り組んでいます。これまでやってきたことの集大成ですし、デジタルキオスクを診療所や学校に設置すれば、その診療所と学校は電気を得ながら収入も得られるし、通信もつながる。それが我々の理想です。では、その場合、コールドチェーンは何に使うのかというと、アイスクリームを販売できます。アイスクリームを売っていてプリンティングサービスがあれば、コンビニエンスストアっぽくなるでしょう。
コンビニエンスストアとおっしゃいましたが、冷蔵、加工、販売、プリンティングサービスなどの機能が全て、一つのコンテナに盛りだくさんに入っているということですか。
プロジェクト名のTUMIQUIの由来はブロックの積み木です。例えば、デジタルキオスクと冷蔵庫を設置するとスペースがなくなるので、加工するには別のコンテナを設置する、さらに事務所を作りたかったらもう1台別のコンテナを横や奥に重ねていく。スペースがあれば、太陽光パネルを増やして電力供給量を増やせる。モジュール式なんです。しかも、コンテナは持ち運べます。セネガルのダカールで作ったものを運び、現地で最終的に組み立てることを考えています。セネガルには中古の海上コンテナがたくさんあって、それを加工する人もたくさんいますが、中に何をどう入れるかという発想やプランを持っている人が少ないので、我々はさまざまなアイデアを詰め込んでブロックにしてあげる、というイメージです。
近年、アフリカのフランス語圏諸国で、旧宗主国であるフランス離れが進んでいるといわれます。そうした中で、フランスのノウハウを持ちながら日本の企業として進出したことはメリットになっていますか。フランス企業ではなく、中国企業でもない、日本企業であることのメリットがあったら教えてください。
フランスでもそうですけど、日本はすごく信頼されていますよね。日本は真面目だと。特に、僻地で車が故障することイコール死につながるアフリカの場合、日本製の自動車は壊れにくいと信頼されています。それが日本に対する信頼感につながっている。
我々はフランス色をあまり出しませんでした。私が、例えば青い目で金髪のフランス人だったら、今と同じことをやると言ったときに、セネガル人たちは今ほど仲間意識を持ってくれなかったかもという気はします。でも、我々日本人の先祖、先輩方が築いてきた日本への信頼があるので、日本人がセネガルで一緒に何かを作ろうとするのは、非常に喜ばれます。あと、セネガル人にとって、フランスに何かを売って儲けるというのは、ちょっと面白いと思っているようです。美味しいものを欲しいという人に美味しいものを売って、外貨を手に入れるという等価交換は、正しい形です。こうした正しいビジネスをどうせやるなら、相手としてフランスは大事だと思っている。やはり完全にフランスとのつながりを切ることはできない。
セネガルの隣のブルキナファソは、ニジェールとマリとサヘル諸国同盟(AES)を結び、反仏路線を貫いています。フランス国籍を持つ人はAES加盟国への入国が難しい。ただ、共通言語としてのフランス語の排除はできないと思うので、フランス離れが進んだとしてもフランス語離れは起きないのではないでしょうか。
アフリカ諸国では、資源や農産物をそのまま輸出するのではなく、国内で加工してから輸出しようという動きが盛んです。マンゴーをピューレに加工して輸出するというプロジェクトは、アフリカ各国の政府レベルの政策とも合致すると思いますが、これに関してセネガル政府からの働きかけはありましたか。
そういった声は何となくあったかもしれませんが、マンゴーの加工・輸出をやろうと思いついたのは自分たちでした。MOUの締結も、我々が提案し、2年かけて実現したものです。やはり、高付加価値で売る、ということが評価された。
あと、セネガルでセネガル人が加工してもビジネスとして成り立ちにくいのです。というのも、機械を使わず手作業でやるから、ISO規格(国際標準化機構)がないとか、どういう状態でやっているのか分からないとか、不純物が混じっていることがあり得ます。それに、セネガル人のほとんどは国内で販売することしか想定していない。そうすると、我々外国人の役割は、外国に販売しやすくすることではないかと思うのです。私は日本人なので、日本のパートナーを見つけやすい。セネガル人が日本やフランスに「セネガルの製品を買ってほしい」と売り込みに行っても、相手は、「品質は大丈夫だろうか?」と思うわけです。でも、日本人がしっかり品質管理しているとか、日本人とセネガル人が一緒に食品加工認証について説明したりすると、信頼してくれます。やはり国際的チームワークが重要だと思います。
また、アフリカのいろいろな国で加工して輸出しようという動きがあっても、なかなか実行できないのは電気がないからです。でも、我々の強みは、自分で電気を作れるので、どこでもできるというコンセプトです。これまでの小さなビジネスは少ない資金でできたのですが、今は大きな電力や加工工場も必要なので、いろいろな企業を口説いて資金調達を進める、というのが今のステップです。
現在はセネガルを中心に活動されていますが、他の国から声がかかったりはしませんか。
2025年9月、ユニセフからの発注で、ガンビア国内の小学校122校にTUMIQUI Smart Kitを導入する契約を結びました(2)。国際移住機関(国連IOM)のガンビア事務所による合計45台の導入も決まっています。我々はガンビアを全く意識していませんでした。でも、在セネガル日本国大使館はガンビアとギニアビサウとカーボベルデを兼轄しているんです。4カ国を見ていらっしゃって、4カ国の国際機関の方々がセネガルの日本国特命全権大使(以下、「日本大使」)に会いに来るわけです。それで、前の在セネガル日本大使が、電気で困っているならTUMIQUI Projectさんに任せればいいと、他国の国際機関の方々に紹介してくださった。セネガルをロールモデルにして、近隣国につながっていく感じです。ユニセフの地域事務所も25カ国くらい管轄しているので、いずれはそこにつながる可能性もあります。まずは1カ国で実績を作ることが大事ですが、ゆくゆくはいろいろな国に広げていきたいと思っています。
セネガル人材を育てると、日本人が行きにくい国でも行けるという利点があります。セネガル人は、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)域内をビザなしで自由に移動できるのです。また、治安の悪い国では、日本人よりはセネガル人の方が誘拐される可能性は低いので、安全面でもメリットがあります。そういうわけで、ご縁があって、ある程度の資金調達ができれば、他国へとプロジェクトを広げていきたいと思っています。ただ、急いでやるつもりはなく、まずはちゃんとセネガルで冷蔵庫がしっかり機能するように取り組んでいるところです。
最後に、我々のもう一つの使命は、アフリカに日本企業を連れてくることだと思います。これまで、関西電力やセイコーエプソンがセネガルに来てくれました。業務提携や出資の話を進める際に実際に見ておかないと社内で説得力がないから、と言って、セイコーエプソンの幹部の方がセネガルを訪れてくれたのです。我々は経済同友会との関係も良く、中東・アフリカ委員会の方々にも支援いただいているのですが、セネガルは遠いと言いつつも、チームで訪問しましょう、と言ってくださる。そして、日本企業に対する足がかりができれば、「レッドオーシャン(競合他社が多い飽和市場)のケニアなどではなく、ブルーオーシャン(競争相手が少ない未開拓の新規市場)のセネガルから検討しませんか」などと声をかけられる。我々が日本企業に出資を呼びかけているのは、資金のことはもちろんですが、「一緒にやりませんか」という気持ちがあります。今、セネガルで活動している日本企業は10社くらいです。伸び代しかありません。
伸び代しかない、本当ですね。素晴らしいです。今日は面白い話をいろいろ聞かせていただきありがとうございました。
(1) https://www.sucrecube.co.jp/co-creation-202506/
(2) https://x.com/unicefgambia/status/1982833730470240512?s=61
(初出:MUFG BizBuddy 2026年3月)