先日、初めてフランスの政治集会なるものに行った。3月の地方選挙に関連したもので、筆者が通訳をした経験のあるA氏がある大都市の市長選に出馬する、というので、A氏をよく知る友人に連れて行ってもらったものだ。政治集会といっても色々な種類があり、この時は賀詞交歓会の形を採り、特にA氏の支持者が集まっていた。このほかには、「ヨーロッパ」「安全」など、テーマごとに各候補者が演説するような集会もあるそうで、そうなると反対派を含めてその話を聞きに来ることになるという。
会場は、中心街からは少し外れたところにある、コンサートも行われるような広めのバー。この時点でA氏は世論調査でトップを走っていたこともあって、会場は熱気に包まれていた。参加者は、定年退職後と思われる人々が多かったが、これはA氏が既存の政党(中道左派)に属していることも関係しているのかもしれず、より新しい政党では支持層が異なるのかもしれない。
この大都市は、前回2020年の地方選挙以来、環境派が市政を握っている。A氏も当初は環境派と協力していたのだが、関係者の話によると、その強引な手法に愛想をつかして野に下った。A氏は演説において、環境派がイデオロギーを押し付けて市に大きな分断をもたらした、と述べ、自分が市長に選ばれた暁には、皆の心をまとめることに専心する、と強調した。皆からの拍手が大きかったのは、「65歳以上の人々にトラムを無料とする」「市内の駐車料金を市民向けに大幅に引き下げる」といった政策であるようだった。
30分ほど続いた演説が終わってしばらくすると、「言うのを忘れましたが」と再びA氏の声が響いた。「バーがオープンしました!」。ここからは歓談タイムで、クレマン(スパークリングワイン)、ビール、軽食などが用意された。人によっては、食事を取りながら、様々な有力者などと言葉を交わすことのできるこの第2部が本番であるかもしれない。筆者はA氏と連れてきてくれた友人しかほぼ知る人がいないので、友人についてもっぱら人の話を聞いていた。友人はあるゲームのクラブを主宰しているのだが、現市政になってから補助金を切られてしまい、A氏支持ではあるけれどもそれ以外の野党の集会にも通っている。彼が言うには、「中道右派のB氏の賀詞交歓会はもっと派手で、会場も町のど真ん中だし、出た食事も結婚式か、と見まがうような豪華なものだった。よほどお金をかけているに違いない。しかしB氏は世論調査では2位か3位、というのだからわからないものだ。出席していた人は食い物目当てだったのではないか」。地方選挙の結果が出るまで、あと約3週間である。