欧州連合(EU)は、ベルギーのユーロクリアをはじめとして域内で保管されている巨額のロシア資産を対
ロシア制裁の一環で凍結し、さらにこの凍結資産の元本を担保としてウクライナに大型融資を行う構想を検
討してきたが、ロシアによる様々な形での報復措置や国際的な信用低下を警戒するベルギーの強い抵抗もあ
り、これを断念した。これには、ウクライナの戦後復興にロシア凍結資産を利用することを計画する米国の
横槍も入ったとの報道もあり、様々な思惑が渦巻いている。ところで、ウクライナ情勢について日本のメ
ディアでしばしば解説しているロシア専門家の小泉悠・東大准教授は1ヵ月ほど前の発言で、凍結資産がロ
シアの外貨準備の一部であり、外貨準備は自国中銀の金庫ではなく、当該通貨の通貨圏において保管されて
いる以上は、恣意的に凍結されたり押収されて、いざという場合に活用できないはめに陥り、外貨準備の本
来の意味合いが失われるのではないかともっともな疑念を表明していた。その意味では、EUがロシアの凍
結資産を利用したウクライナ支援に踏み切った場合、ウクライナ支持派から英断と称賛されるだろう一方
で、世界の外貨準備制度の安全性が根幹から揺らいだ可能性もある。法の支配を原則とするEUとしては、
凍結資産の元本に手を付けることを断念したのは、長期的に見て賢明な選択だったように思う。