11月13日

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

フランスで「11月13日(le 13 novembre)」といえば、2015年の11月13日のことであり、この日にパリのバ
タクラン劇場で起きたテロ襲撃事件を指すことになってしまった。それほどインパクトがあったイスラムテ
ロ事件だったはずなのに、その後の10年間に、都市郊外の若者の間では原理主義的なイスラム教の影響がい
っそう強まり、ハマスはテロ組織ではなく正当な抵抗運動だと応援する左翼政党が若年層にしっかりと食い
込み、高校・大学ではイスラエル批判・パレスチナ支持の学生運動が活発化して、学術的な議論すら封殺さ
れ、ユダヤ人にとり極めて居心地の悪い社会ができあがったのは、いささか皮肉な事態と言わざるを得な
い。同じ2015年の1月に起きたシャルリー・エブド襲撃事件の後、イスラム教徒の間では犯行を批判するこ
とや被害者に黙祷を捧げることを拒む人が少なくなかったのだから、同じようなイスラムテロ事件が特にユ
ダヤ人を標的として今のパリで起きたなら、手放しで拍手喝采する人の群れが街路を埋めるかも知れない。
メディアは「11月13日」の10周年特集を組み、生存者が今も抱える深刻なトラウマを取り上げているが、
事件の教訓はすでにすっかり風化してしまったのではないだろうか。もちろん筆者の偏見に過ぎないのであ
れば嬉しいが、このまま世代交代が進めば、ジハーディズムの勢いを阻むものは何もなさそうな気がする。