ノンフィクション作家エマニュエル・カレール、自らのロシアルーツを再検証

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

米ニューヨクタイムズ紙がフランスの作家エマニュエル・カレール氏(67)の近況を報じた記事を掲載して
いる。同氏はジャンクロード・ロマン事件(WHO勤務医者と嘘をつき続けていた無職の男が、嘘がばれそ
うになり、家族全員を殺害して自殺未遂)という実際の事件に題材をとった小説『L’ Adversaire』(「敵」
と「(神の敵対者である)悪魔(サタン)」の両義をかけた題名だが邦題はちょっとベタな『噓をついた
男』)以後はもっぱらノンフィクション作家として活動しており、8月に刊行された最新作『コルホーズ』
はベストセラーとなった(残念ながら筆者は未読)。もしかすると今年のゴンクール賞も受賞するかも知れ
ない。これは一種の自伝の形をとって、自らのロシアルーツと母親との関係を探っているという。同氏の母
親は歴史家の故エレーヌ・カレール・ダンコース氏で、ロシア系の一家に生まれ、フランスにおけるロシア
史の大権威だった。ただし、ロシアがウクライナに侵攻した後は、プーチン政権に寄り添い過ぎたとの批判
も浴びた。エマニュエル・カレール氏自身もロシアを愛し、頻繁に訪れているが、最近の談話では、侵攻を
機に「私の中の何かが打ち砕かれ、今もそのままで、私のロシアへの愛は深く傷ついてしまった」と述べて
いる。同氏は『コルホーズ』の中で、母親のロシア政府に対する甘い態度を鋭く批判することを躊躇せず、
自らのロシアとの関係を根本的に再検証している。これは家族関係と自らの軌跡の見直しでもあり、強い痛
みを伴う作業だ。英訳が来年に出版される予定。ロシア好きもロシア嫌いも、一読の価値がありそうだ。