ルコルニュ首相、内閣人事発表後に辞任

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

フランスではルコルニュ首相が5日に内閣の顔ぶれを発表したかと思いきや、6日朝には辞任するという前代
未聞の事態が発生した。バイルー前内閣からの留任組はともかく、初入閣の閣僚にとっては在任期間がわず
か半日という(茶番)劇的な展開となった。追い詰められた恰好のマクロン大統領は、ルコルニュ首相に対
して8日夜を期限に、諸政党と再交渉することを要請したが、何らかの合意が成立する可能性は薄い。仮に
合意が成立しても安定的な内閣が発足することは望めず、すぐに議会で不信任の餌食になるリスクが高い。
大統領は、首相の交渉が失敗に終わった場合、「自分の責任を取る」と予告したが、その具体的な中身は明
らかではなく、様々な憶測が飛び交っている。マクロン大統領にこの政局混迷を収拾する力があるとは考え
にくく、大統領の早期退陣を要求する声も強い中で、フランスの現行の政治システムがいよいよ限界に達し
たとの感触が強い。ロシアの軍事的脅威や米国の経済的圧力に抗して欧州連合(EU)が安全保障を強化し
なければならないという重い課題に直面している折だけに、その柱となることを求められている核保有国フ
ランスの政治危機はいかにもタイミングが悪い。ただし、フランス近代史を辿り直すと、この国が政治危機
の度重なる繰り返しを通じて国民国家としての結束を強めてきたことも確かで、危機への対処に精通してい
る強みもある。ナポレオンやドゴールのような強いリーダーの出現はもはや望むべくもないが、せめてナポ
レオン3世クラスの(似非?)ヒーローが登場して事態をうまく収拾することを期待して待とう(それはそ
れでより危険な事態や新たな危機にも繋がりかねないけれど)。