EUと米国の間で関税に関する合意が成立し、米国がEUからの輸入品に課す関税率は15%に決まった。トラ
ンプ大統領が予告していた30%は回避したものの、トランプ以前より10ポイント超高い関税が課されること
になる。英国は10%で米国と合意しており、それより不利な条件だが、そもそも英国の対米貿易黒字はさほ
ど大きくないので、事情が異なる。日本も15%で合意したことを見れば、妥当な落とし所だったとも考えら
れ、独伊の首相などは欧州委が取り付けた合意を支持しているが、フランスなどからは安易な妥協だとの批
判が噴出している。EUが自らの経済的・外交的な重みを十分に自覚しておらず、もっと強気で交渉すべき
だったのに、最初から劣勢に甘んじてしまったのは情けない、という批判は、関税以外の問題に関する交渉
でもしばしば聞かれるが、米中が牛耳る世界の中でのEUの「実力」を正確に把握したうえでの主張なのだ
ろうか。例えば、ロシアによるウクライナ侵攻の企てをEUが独力で押し留めることができていたら、なる
ほどEUには米中に匹敵する国際的影響力がある、と誰もが認めただろうが、米国の後ろ盾なしには、すぐ
お隣のロシアを牽制することすらできないのが実情だ。まして米国の脅迫に抵抗できるはずもない。もちろ
んEUの人口や経済の規模、科学技術力、文化的影響力などを考慮すれば、EUが多極化する世界の重要な極
の一つであることは間違いないが、トランプやプーチンや習近平のように「力の支配」優先の親分たちに脅
されて、各方面にみかじめ料を支払わざるを得ない立場から脱却できる可能性は今のところ見えてこない。