マクロン大統領は9日の昼過ぎにガブリエル・アタル教育相を新首相に任命した。8日に辞任の発表済みのボルヌ首相との引き継ぎが9日中に行われる。
アタル新首相は34才で、ミッテラン時代のファビウス首相(37才で就任)を抜いて第5共和制での最年少首相となる。また、アタル新首相は数年前に同性愛者であることを公表しており、これもフランスの首相としては前例がない。
アタル新首相は1989年にパリ首都圏クラマールの裕福な家庭に生まれた。パリ市内で育ち、高校まで6区の有名校に通った後、2007年にパリ政治学院に入学し、2013年に修士号を取得。並行してパリ大学で法学の学士号も取得した。
政治活動の面では、2006年に社会党に入党し、ストロスカーン元IMF専務理事を支持する派閥に属していた。2012年にトゥレーヌ保健相の官房のメンバーとなり、2017年の大統領選挙を控えてマクロン氏が新党LREM(現与党ルネサンスの前身)を立ち上げた際に、社会党を離党してLREMに合流した。2017年6月の総選挙で下院議員に初当選し、2018年の1月から10月までLREMのスポークスマンをつとめた後、2018年10月に教育・青年閣外相として初入閣。2020年6月から2022年5月まで政府報道官、2022年5月から2023年7月まで予算担当相、2023年7月からは教育相を歴任した。特に、半年足らずだが、教育相として毅然たる態度で矢継ぎ早に発表した改革策などが注目され、世論調査での支持率もうなぎ登りで、次代のエースと目されるに至った。なお、元来は左派ながら、教育相としてはむしろ右派に近い姿勢を示したことも注目された。極右政党RNのジョルダン・バルデラ党首(28)が野党陣営の若手のホープとして高い支持率を得つつある中で、マクロン大統領は与党の支持率挽回を狙って、同じく若手のホープであるアタル氏を首相に据えて対抗する方針だとの見方もある。ただし、8日のボルヌ首相の辞任から、アタル新首相の任命まで当初の予想以上の時間を要した背景には、与党内でこの人事に対する強い抵抗もあったことをうかがわせる。