2021年10月12日 編集後記

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

ジュネーブモーターショーのサンドロ・メスキータCEOはつい先ごろ、来年の2月には同モーターショーを再開すると予告したばかりだったのに、7日には、開催の中止を発表する羽目に追い込まれた。半導体不足のせいで苦境に陥った多くの自動車メーカーが、モーターショーへの出展を断念したためらしい。すでにモーターショーというイベントのあり方や意義自体が問われ直され、かつてのような華やかさを失いつつあったことは確かだが、高らかに宣言したばかりの再開計画を数日後にはすごすごと引っ込めざるを得ないほど事態は深刻化しているわけだ。モーターショーが特に好きというわけではないが、残念だ。
バーチャルイベント、バーチャル展示会、バーチャル展覧会などを見るのは、移動の手間が省けるし、予期せぬ不愉快な目にあうリスクも少ないので、決して嫌いではないが、全てがバーチャル化してしまうと、なんとなく物足りなく、せっかくの体験自体も希薄化してしまうことは否めない。現実的なもの、とはやはりどこかで身体的な苦痛とリンクしているので、人混みや臭いや騒音や衝突や疲労が伴わないと、うまく記憶に刻み込まれないのかも知れない。しかし、その意味では、突然の開催中止、というのも(関係者には気の毒だが)いきなり生の現実をドンと突きつけられた気がして、どこか快感すらある体験かも知れない。