2021年10月5日 編集後記

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フランスの次期大統領候補として支持率がうなぎ登りのエリック・ゼムール氏は、移民に対してフランス社会への単なるintegration(溶け込み)ではなく文化・精神面まで含めた完全なassimilation(同化)を要求する。北アフリカ系の移民家庭に生まれ育ち、生粋のフランス人以上にフランス人らしいフランス人になろうと涙ぐましい努力を積み重ねてきたと思しい同氏の主義主張にはどこかいじらしいところがあり、筆者は嫌いではないし、同氏の見解の大多数は正しいとも思うが、さて、「フランスへの同化」とは具体的に何を意味するのか考えると、移民の一人としてちょっと腰が引けてしまう。
筆者がフランスに何十年か暮らして分かったフランス人の特徴は「仕事が杜撰で、無責任で、ミスをしても 自分の過ちや責任を認めず、決してあやまろうとしないし、謝罪を強いられた場合も、心から反省することはない」ということだ。もちろん、筆者の周りには、これとは真逆の立派なフランス人もたくさんいるのだが、公共機関や企業で働くフランス人の大半に当てはまるイメージだと思う。そういう人々の集団であるフランス社会は決して生きやすい場ではない。余計なストレスが大きく、つまらぬトラブルでエネルギーを消耗しがちだ。筆者の知り合いの一人(フランス人)はこれを「クラブメッド(地中海クラブ)」と揶揄しているが、恐らく南欧諸国に共通の特徴でもあるのだろう(個人的には、非常に立派なポルトガル人、スペイン人、イタリア人を知っているので、南欧人全てがそうだと主張するつもりは毛頭ないけれど)。筆者としては、こういう地中海クラブ的な国民性に「同化」するのは正直なところ御免被りたい(その意味では、地中海南部からこれ以上移民を入れるな、というゼムール氏の主張には同感だが…)。
また、ゼムール氏が称賛してやまないフランスの文化や文明は過去においてたしかに素晴らしいものだったし、モンテーニュやデカルトや18世紀の啓蒙思想家などを誇らしく思うのは当然だが、今やフランス文化は衰退し、似非アメリカ化が進む一方だ。同化せよ、と移民に要求するなら、まずはフランスが、世界の人々が憧れるような文明のリーダーとしての地位を回復することが先決だろう(無理筋は承知の上)。