2021年9月28日 編集後記

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

マルセイユをはじめとして、フランスの各地で麻薬の売買をめぐる抗争が多発している。市内で売人同士の銃撃戦が起き、死傷者が出ることも珍しくない。売人が互いに潰し合って、人数が減るだけなら、悪いことではないが、普通の市民がいつ巻き込まれるかわからないだけに、物騒だ。
そんな中で、パリ市では麻薬の常習者が安心して麻薬を消費できる衛生的なスペースを提供することに当局が血道をあげている。近隣住民の迷惑などはそっちのけだ。筆者の知らぬうちに、麻薬の売買や消費が合法化され、常習者を手厚く保護することが決まったのだろうか? それとも、麻薬常習者の人権が、一般市民の人権よりも優先される新法が採択されたのか?
公衆衛生法のL.3421-1条では麻薬の使用が禁止されており、違反者に対する処罰も規定されているが、これは有名無実で、常習者は野放しになっているのが実情だ。取締が不可能なのが現実ならば、合法化してしまえ、という議論にもたしかに一理ある。筆者自身はそうしたなし崩し的な動きには反対で、逆にもっとラディカルな取締を望むが、どうせ人権主義者の反対で実現するはずもない。フランスは人権思想を人類に押し付けた主要国の一つだが、自らの歴史に復讐されつつあるのではないだろうか。いまや人権主義による束縛にがんじがらめになって、市民の安全を保護することもままならないフランスの現状に西欧文明衰退の兆候をみてとるのは大げさか?