ビュザン前保健相に予審開始通告:コロナ危機への対応を巡り追及

共和国法廷は10日、ビュザン前保健相を召喚して事情聴取を行った。新型コロナウイルス危機への対応に絡んで、「第三者の生命を危険に陥れた」容疑で予審開始を通告した。
予審は、担当予審判事が起訴の是非を決めるために行う裁判上の手続き。共和国法廷は、閣僚が職務の遂行に絡んで犯した犯罪を裁く特別法廷。新型コロナウイルス危機への政府の対応を巡っては、共和国法廷に対して2020年7月以来で1万4500件に上る提訴がなされており、いずれも政府の対応が不適切だったと主張して政府の責任を追及している。そのほとんどが不受理となったものの、医療関係者の防護具等の不足や、危機の初期段階におけるマスク着用の義務付けまでの紆余曲折等に関する16件の提訴が受理され、捜査が開始されていた。ビュザン氏は、2017年のマクロン政権発足を経て保健相に就任し、危機が始まった直後の2020年2月に、パリ市議会選挙に出馬するため保健相を辞任していた。共和国法廷の予審判事は、「第三者の生命を危険に陥れた」容疑で本人を対象にした予審の開始を決定。また、「災害対策の意図的な放棄」の容疑での捜査において、ビュザン氏を「弁護士同席が伴う参考人」に指定した。これは、事情聴取において弁護士同席を必要とする参考人を意味し、一般に予審開始に至る可能性がある前段階と受け取られている。共和国法廷は、ビュザン氏の後任であるベラン現保健相や事件当時のフィリップ首相らからも事情を聴取する方針で、捜査の対象がさらに広がる可能性もある。
政府は今回の決定について、裁判所の決定にコメントはしないと前置きした上で、リスクに関する十分な知識が乏しかった当時において、ビュザン氏が真剣に対応したことを疑うことはできないとしてビュザン氏を擁護し、政府の現今の対応についても間接的に正当化した。与党内には、裁判所による判断にはなじまない案件であり、追及を恐れるあまり適切な対応がおろそかになる恐れもあるとする批判の声も聞かれる。野党勢力の中には、この件をマクロン政権を追及する材料にしようとする動きもある。