2021年8月31日 編集後記

投稿日: カテゴリー: アライグマ編集長の日々雑感

マール・メノール(スペイン・ムルシア州)は地中海に面したラグーンで、欧州最大の海水湖だというが、近隣の農地で用いられる肥料から流出した硝酸塩の濃度が高まり、魚の大量死を招いている。過去2週間で5トンもの魚の死骸が回収されたという。今回が初めてというわけではなく、何年も前から慢性的な問題となっているが、環境団体によると、州政府が8500ヘクタールもの不法農地の存在を容認しており、そこから肥 料によって汚染された水がマール・メノールに流れ込むのが原因だという。こういうケースではありがちだが、中央政府と州政府は責任のなすり合いをするだけで、具体的な対策を講じる気配がなかった。今回は各方面からの批判を浴びて、環境省と州政府が共同で対策を練ることを決めたが、専門家は生態系の回復には長い時間がかかると警告している。
不適切な比較かもしれないが、遠いアフガニスタンでタリバンが支配権を握ったぐらいで欧州の世論は大騒ぎするのに(しかもこれは外国勢力による侵略ではなく、タリバン自身もれっきとしたアフガニスタン人であり、同じイスラム教徒である大多数の地元民の圧倒的支持を背景に素早い制覇を実現したことは明白)、 すぐ近くの海で5トンもの魚が汚染で死滅しても、騒ぐ人は少ない。アフガニスタンの地政学的重要度といった議論はもちろんあろうが、どこか不思議な世の中である。