2021年7月27日 編集後記

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イスラエルの歴史家ユヴァル・ノア・ハラリによると、人間が他の動物と大きく異なるのは、互いに相手を知らずとも非常に多人数で柔軟に協力しあえる能力があることだという。確かに我々は、地球の裏側にいる赤の他人とでも、想像力に基づく(想像力にしか基づいていない虚構の)物語を共有することで相互的な信頼を打ち立て、協力しあうことができる。しかも、その協力の仕方は時代や状況に応じて比較的簡単に変更可能で、遺伝子の進化を待つ必要はない。これはハチやアリにも、チンパンジーにもできないことだ。それが、相対的に貧弱な肉体しか持たない人間を極めてパワフルな動物にしている。
こうした大規模かつ柔軟な協力の好例がオリンピックだろう。
東京オリンピックは悪評高いが、そんな風に考えてみると、意外に美しいイベントのようにも思えてくるから不思議だ。そこでは、平和と友好のための世界的な集いというフィクションや、国家や愛国心というフィクションがフルに機能しており、何の実体もないこうした信憑に基づいて、長年を費やして鍛え上げれられた実際の肉体が実際には何の有用性も価値もない記録やメダルを目指して躍動しているのだ。いや別に皮肉や揶揄ではなく、これこそが人類のあるべき姿なのだろう。