ルノー:期待と不安で揺れるドゥエ工場の従業員

投稿日: カテゴリー: 欧州自動車・モビリティ情報

7月15日付けのリベラシオン紙は、ルノーのドゥエ工場の従業員が電気自動車(EV)生産計画に対して抱く期待と不安に関するルポを掲載した。デメオCEOの発案により、オードフランス地域圏にあるドゥエ(ノール県)、モブージュ(ノール県)、リュイ(パドカレー県)の既存3工場を統合し、EV製造拠点「ElectriCity」を整備する計画について、6月8日に労使合意が成立した。合意には経営陣との対立姿勢で知られるSUDやCGTを含む全ての労組が署名するという異例の事態となった。この計画では、既存の5000人の雇用を維持するだけでなく、2024年までに700人を新規雇用することが予定されており、CFDTの責任者は、1年半前には雇用創出など想像もできなかったと歓迎している。
特にドゥエ工場(2800人)はその生産能力の利用度が8%に低迷し、グループ内でもっとも生産性の低い工場となっているだけに、EV生産計画の成否は工場存続の最後の頼みの綱となる。しかし、同工場の従業員の間では懐疑的な見方が強く、例えばやはりCFDTに所属するある従業員も、実際の成果を見ない限りは信用できないと警戒している。これはゴーン会長時代の苦い経験があるためで、ゴーン氏は高級車の販売を強化することを狙い、ドゥエ工場で価格が3万5000-5万ユーロの高級車を次々と生産させたものの、売れ行きは芳しくなく、それがドゥエ工場の稼働率を極度に押し下げる結果に繋がった。
しかし、CGTの責任者は、EV生産計画には整合性があると評価し、EVは従来型自動車と比べて、組み立てに必要な労働力需要が30%少ないと言われるので、人員削減を心配していたが、「ElectriCity」では30%も人員を削減することはなく、EVといえども、従来型の各種作業に従事する人員は常に必要だとわかったと説明している。
さらに、近隣にEV製造向けの若手人員育成を目的とする教育施設が開設され、また中国のエンビジョンとの提携で、ドゥエ工場の敷地内に、バッテリーの大型工場が設置されることも、従業員らの安心感醸成に繋がる要素となっている。バッテリー工場には20億ユーロが投資され、2024年までに1000人の雇用創出が見込まれる。
ただし、CGTもCFDTも果たしてEVが期待通りに売れるかどうかには不安を隠さない。充電設備の不足もEVの販売を左右する不安材料となっている。
ドゥエ工場では現在「メガーヌ」のEVモデルの生産が試験されており、2022年1月には生産が開始する予定だが、従業員らは価格が高すぎて売れないだろうと悲観している。従業員らの期待はもっぱら、2024年を目処に生産が見込まれる「R5」にかかっている。同じ敷地内でバッテリーを生産できるおかげもあって、「R5」の販売価格は2万ユーロ程度に落ち着く見通しであり、これなら価格競争力に不安はないとみられている。