ルノーのゴーン元会長、ディーゼルゲートに関する責任を全面的に否認

投稿日: カテゴリー: 欧州自動車・モビリティ情報

ルノーのゴーン元会長(67)が5月26日にレバノンでフランスの予審判事による取り調べを受けた際の発言内容が、7月初めにル・モンド紙などにより報じられた。AFP通信の7月12日の報道によると、ゴーン氏はベイルートで証人として、6時間以上に及ぶ事情聴取に応じた。
パリからベイルートに赴いた3人の予審判事は、ルノーによるディーゼルゲート(ディーゼル車の排ガス規制不正疑惑)におけるゴーン氏の役割について質問したが、同氏は自分にはエンジンに関する問題を扱う能力はないため、問題の管理は部下に任せていたとし、自分には一切の責任はないと主張した。ゴーン氏は、2016年以後、ルノーと日産の経営者を務め、日産と三菱自動車の合併にも携わっていたので市場や企業間シナジーを考えるのに忙しく、エンジンの詳細については知らなかったと説明し、全ての責任を部下に転嫁する姿勢に終始した。
大手自動車メーカーの不正が発覚したのは2015年のことで、フランスでは、消費者保護当局DGCCRFによる調査や、予審判事による予備捜査を経て、2021年6月までに、ルノー、フォルクスワーゲン(VW)、プジョー、シトロエンの各社が相次いで予審開始通告を受けた。DGCCRFは早くも2016年11月の報告書で、ゴーン氏の責任を指摘していた。
捜査担当者らは、ルノーが経済面の考慮を優先する恒常的な経営戦略を採用し、1990年代に欧州連合(EU)が大気汚染対策の一環で自動車排出ガス規制を導入した当初から、規制逃れを続けてきた疑いもあるとみている。
これに対してゴーン氏は自らがルノーの経営を率いた2005-2019年の時期について、規制の遵守を怠ったことはないと反論し、ときには能力や成果の不足による問題があったが、他の自動車メーカーが責められているような意図的なごまかしは一切ないと言明した。
ゴーン氏は技術的な選択については、パトリック・ペラタ、カルロス・タバレス、ティエリ・ボロレなどの歴代COOやムナ・セペリ執行副社長などに任せていたと述べ、また、エンジン、ソフトウェア、排出ガスなどについて決定を下していたのは、機械工学部門だとし、自分自身はエンジンの専門家ではないと説明した。
ゴーン氏は、欧州自動車工業会(ACEA)の会長を務めた際に、排出ガス規制について欧州委員会の相談相手だったが、自分ではそうした規制問題に関心はなく、部下がまとめた意見を伝達していたに過ぎないとも主張。ルノー車で試験時と道路走行時で、排ガス量に大きな差があることについても、知らされていなかったと潔白を強調した。
ゴーン氏はさらに、規制の遵守は消費者の信頼を得るための基本であり、重要だと述べて、ルノーがゼロエミッションの電気自動車開発に早くから取り組んだのも、それが理由だと説明した。