現代アーティストのクリスチャン・ボルタンスキー氏が死去

記憶と死をテーマにしたインスタレーション作品で広く知られる現代アーティストのクリスチャン・ボルタンスキー氏が7月14日にパリで死去した。76才だった。7月初旬に出血症で入院し、急性白血病で亡くなった。
ボルタンスキー氏は1944年9月にパリで生まれた。父親はロシア系ユダヤ人で、ドイツ占領時代には離婚を偽装して自宅の床下に隠れ住んでいたというエピソードがある。ボルタンスキー氏自身は、自らの作品をユダヤ的な作品として取り扱われることを望んでいなかったが、ホロコーストが自身の作品創造の根幹にあることを認めている。創作活動の原点となった写真について、「イメージを残そうとすることは死にも似た行為である。何かを保存しようとする。それにより保存されるものは、最初にあったものとは別のものだ」と語り、芸術創造の結果として生じるものを生の痕跡であり、死として捉えた。生の時間の厚みを、死である物の堆積に転換して提示するその廃墟じみた作品空間は、逆の方向から眺めれば生に向けた投射であるとみることもできる。日本との縁も深く、豊島(てしま)美術館では、訪問客が自らの心臓音を採録できるプロジェクト「心臓音のアーカイブ」が運営されている。