オマール事件で再審請求

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1991年6月23日に発生した資産家女性ギスレーヌ・マルシャルさんの殺害事件から近くちょうど30年が経過する。「オマール事件」として知られるこの事件で、犯人として有罪判決を受けたオマール・ラダド元受刑者は近く、再審請求を最高裁に対して提出する。新たなDNA鑑定結果を根拠として裁判のやり直しを求める。
この事件は、マルシャルさんが血で扉に書いたと思しき「オマールが私を殺した」という文章で有名になった。この文章もあり、マレシャルさんの使用人で庭師を務めていたモロッコ系のオマール・ラダド氏が逮捕され、1994年に禁固18年の有罪判決を受けた。物的証拠が乏しい中での有罪判決でもあり、事件は大きな反響を呼び、容疑から有罪判決に至る過程にはモロッコ系住民に対する差別的な見方がにじみ出ているという議論もなされ、モロッコとフランスの間の外交関係の緊張化も招いた。当時のシラク大統領は1996年に残り刑期への恩赦を与え、ラダド氏は同年中に釈放されたが、再審はこれまで認められておらず、有罪判決は現在に至るまで有効となっている。
この事件は、再審請求の条件の緩和を含む司法制度の改正をもたらすきっかけにもなった。捜査当局はラダド氏側の提訴を受けて捜査を続けており、ラダド氏側はこれまでに、DNA鑑定により問題の扉にラダド氏のDNA痕跡がなく、他の数人の男性(特定はされていない)の痕跡が検出されたことを根拠に再審請求を行ったが、これは却下されている。今回の請求は、DNA鑑定結果の再調査の報告書を根拠にしてなされる。「ダイイングメッセージ」は、2つの扉になされており、一方の扉はかなりかすれて、途中で終わっているが、再調査によると、同一人物のDNA痕跡はこの2つ目の痕跡の周囲に集中して分布しており、これは、犯行後の捜査以降についた痕跡ではなく、偽装した人物が作業の過程で残したものである可能性が高いという。