ルノーのデメオCEO、「技術の牽引車」を目指す

投稿日: カテゴリー: 欧州自動車・モビリティ情報

ルノーのデメオCEOは6月1日、ルパリジアン紙の読者数人によるインタビューに応じた。同紙は、多忙の中で2時間も様々な質問に率直に答えたデメオCEOのフレンドリーで、打ち解けた態度を「イタリア人らしい魅力」と評価し、冷淡な印象のあったゴーン時代との対比に注目している。
昨年7月にCEOに就任したデメオ氏は、自分でもすでに25年前に勤務したことがあるルノーを「人間的で、家族的な面のある非常に感じの良い会社」と形容した上で、組織が重く複雑なところも昔と変わっておらず、俊敏性を増す必要があると指摘。昔と違うのは、日産・三菱自とのアライアンスにより国際化したことで、会議でもフランス語を話さない出席者がいれば即座に英語に切り替えるという。
ゴーン氏の経営方針については、功績も大きかったが、販売台数を増やして規模を大きくすればするほど競争力があると考える「量の文化」一辺倒になってしまったことが、現在のルノーの苦境につながったと分析。現在の課題は、量にこだわることなく価値を追求することだとし、自らの置かれた立場を、一方でホースで水をまいて火消しをしながら、他方では筆で未来を描こうとしている精神分裂的状況だと説明した。
アライアンスに関しては、他に例がないユニークな提携関係だとし、ルノーも日産も経営難に陥っているだけに今の事態は複雑と形容。ただし技術面ではルノーも日産も他社に引けを取らず、アライアンスのR&D予算を合計すると世界のトップ5位に入るとも強調した。また、複数の企業の協力では重複を避けることが肝心とも指摘。
1月に提示した新戦略プラン「ルノーリューション」については、市場と顧客を重視した戦略の抜本的変更であり、フランスが中核になると説明。アナリストによると、10年後には自動車産業のバリューチェーンにおける伝統的部分は25%縮小し、逆に新たな価値が9倍に増える見通しだが、ルノーはこうした新たな価値を追求し、「技術の牽引車」になると言明、「ルノーリューション」はフランスのGDPに80億ユーロの影響をもたらすと予測した。
CEOはまた、フラン工場を中軸に整備済み中古車の提供を強化する方針や、利益の小さい小型車に重心が偏っているルノーの現状を変革して、上位セグメントを強化する方針も明らかにした。最高時速を180キロメートルに制限する方針については、交通事故の3割はスピードの出し過ぎに原因があるので、「社会的責任」の見地から決めたと説明。
仏ノール県にバッテリー工場を開設して2000人の雇用を創出する計画との関係で、電動化が雇用に及ぼす影響について質問されたCEOは、EVとバッテリーは、従来型の自動車と内燃エンジンに比べて、必要とする人員が少ないことを認めた上で、ルノーの社会的責任は、もはや価値のなくなった雇用を保護することではなく、人々がより高い技能を必要とする仕事に就けるように後押しすることだと強調し、従業員の訓練を強化する計画に言及。また、欧州のグリーン技術を用いた未来のバッテリーの発明が可能かどうかを注視しているとも強調した。EVの付加価値については、排気ガス規制が強化されるに連れて内燃エンジン車のコストは上昇し、一方で、EVのコストは下がるので、2025年ないし2026年にはEVのコストが内燃エンジン車を下回り始めるとの見方を提示。
エネルギー移行に伴う技術革新としては、EV以外に水素にも注目しており、バリューチェーンの全体をカバーする合弁事業により脱炭素化水素を顧客に提供し、欧州の水素市場で30%のシェアを確保することを目指すと述べた。
CEOは、ルノーの経営再建は困難な挑戦だと認めつつ、自分は6才の時に自動車部門で働くことを決め、仕事をミッションと考えてハードルを高く掲げ、全力を尽くしていると語った。