ナチスが没収のピサロ絵画、元所有者が訴訟を取り下げ

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カミーユ・ピサロの油絵「羊たちを戻らせる羊飼い」(1886年)の所有権を巡る訴訟で、元所有者の子供であるレオーヌ・メイエ氏(81)はこのほど、訴訟を取り下げ、所有権を放棄すると発表した。米オクラホマ大学財団の全面的な所有物となることが決まった。この絵画の評価額は150万ユーロに上る。
レオーネさんは百貨店大手ギャラリーラファイエットの社長を務めたラウール・メイエ夫妻の養子。メイエ夫妻は第2次大戦中に、ナチスドイツにより美術品を没収されたが、その中にピサロのこの絵画が含まれていた。レオーネさんは2012年にこの絵画がオクラホマ大学の所有となっていることを突き止め、2016年に大学側と合意を結んだ。この合意は、3年ごとに米仏で交代で展示するという内容で、作品は現在、パリのオルセー美術館にて展示されているが、オルセーは作品の運搬に伴うリスクと費用を問題視して共同所有者となることを拒否。メイエ氏は、オクラホマ大学による作品入手の経緯に疑念があることを根拠として、返還を求める訴訟を仏国内で起こしていた。
この絵画は1951年にスイスで取引の対象となり、その後にニューヨークで取引の対象となった。1957年に収集家が買収し、2000年にオクラホマ大学に寄贈された。大学側は、過去の経緯を知らなかったと主張し、メイエ氏の提訴を不当として、米国国内でメイエ氏を相手取った訴訟を起こしていた。メイエ氏が訴訟の取り下げに応じた背景は明らかにされていない。作品はこの夏にも米国へ移送される見通しで、それまではオルセー美術館での展示が続けられる。