警察署襲撃事件、職員1人が死亡:イスラム過激化のチュニジア人の犯行

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パリ南郊ランブイエ市(イブリーヌ県)の警察署が23日、刃物を持った男により襲撃を受ける事件が発生した。49才の女性職員が刺殺された。犯人は警察官らにより射殺された。テロ容疑で捜査が開始された。
事件は23日の14時20分に発生。犯人は、入口の二重になっている防犯扉内に職員の女性の後から入り、刃物で襲撃した。この際に「アラーアクバル」と叫んだという。警察官らは犯人を射殺し、被害者を救出したが、被害者はその直後に死亡した。
犯人はチュニジア人のジャメル・ゴルシェン(36)。犯人は2009年にフランスに入国。父親の住むランブイエ市に2015年以来居住していた。長らく不法滞在者だったが、2019年に身分を正規化し、運転手・配達員として働いていた。2021年末日までの滞在許可証(1年期限)を所有していた。警察は、父親(同居はしていなかった)と、パリ首都圏に住む親戚2人、同じくパリ首都圏に住み、2009年に入国した際の居住先だった家の夫妻の5人を逮捕し、事情聴取を進めている。犯行への協力がなかったかを主に調べているが、警察は現時点で、積極的な協力者のネットワークが背後にあった可能性は薄いとみている模様。
ゴルシェンは警察や情報機関による監視対象にはなっておらず、駐車違反などを除いては犯罪歴はなかった。本人のSNS上での発言を見るかぎり、この1年余りの間にイスラム過激化の傾向を強めていったことが明らかで、ラマダン中の金曜日という日時をみても、イスラム過激派の影響下の犯行であることは間違いない。父親など関係者らは、ゴルシェンが近頃神経衰弱の様相を呈しており、新型コロナウイルスによる制限措置が特にこたえていたようだと証言している。
カステックス首相は24日に現場を訪問し、イスラム過激派によるテロに断固として対抗すると言明した。マクロン大統領は報道陣を伴わずに被害者の家族を訪問し、哀悼の念を伝えた。事件については、保守や極右の野党勢力から、政府の移民対策の誤りが招いた結果だなどとする批判の声も上がっている。