マクロン大統領、「薬物摂取者の心神喪失は認めない」法改正示唆で波紋

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト

マクロン大統領は19日付のルフィガロ紙とのインタビューの中で、自ら麻薬物質を摂取して心神喪失に陥った者には刑事責任の追及を可能にする方向で、法令を改正する考えを示した。これについてルモンド紙は否定的な専門家らのコメントを紹介している。
マクロン大統領は、ユダヤ人の女性高齢者を殺害した犯人を不起訴処分とすることを決めた14日の最高裁判断に絡んで、法令改正を示唆した。この事件は2017年に発生、司法当局は、犯人の男性が薬物接種により一時的に心神喪失に陥っていたと認めて不起訴処分とし、最高裁もこの決定を認めたが、マクロン大統領は、狂人を罪には問えないが、自分から薬物を摂取して心神喪失となった者は責任を問われてしかるべきだと言明。犯罪を処罰せずにはおかないという考え方から、法令を改正するべきだと述べた。
ルモンド紙はこれについて、この問題で国会議員による報告書が5月に提出されることになっているのに、それを待たずに姿勢を明らかにした大統領の対応は驚きであると指摘した上で、精神科医や法律の専門家らの慎重論を紹介した。それによると、麻薬中毒者は依存状態にあるため薬物を摂取するのであり、自由意志を喪失した病的な状態にある以上、意志的な摂取であるか否かを判断するのは困難である。また、そのような人々を刑務所に収監しても、再犯を抑止する効果は得られず、刑期を終えれば出所するだけであり、精神病院への強制入院と比べて社会の安全が保たれるとはいえない。さらに、現行法令の下でも、事実において心神喪失者の責任が問われることは多く、裁判所が裁判の是非を決めるために依拠する精神科医の鑑定結果は、むしろ心神喪失を認めない方に傾くことが多い。この結果、刑事施設の精神科医が作る団体の推定によれば、収監者の10-15%は病院に収容されるべき者であるという。ルモンド紙が引用した専門家は、困難な問題であり、個別の事件を踏まえて感情的に決定を下すべきではないとコメントしている。