2021年4月20日 編集後記

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アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンが敬遠されている。仏ニース市では17日土曜日の接種向けに、大型ワクチン接種センターで4000回分を用意して、希望者を募っていたが、蓋をあけてみたら、なんと58人しか集まらなかった。アストラゼネカ製ワクチンやジョンソンエンドジョンソン製ワクチンが血栓症の副反応を招きやすいことを示すデータが集まりつつあるし、医薬品当局も認めているので、これは単なる風評被害の類いではなさそうだ。当初、非常に懸念されていたワクチン忌避問題はパンデミックの恐怖によりいったんは克服されかけたに見えたのだが、いままたワクチン忌避に新たな論拠を与えるような事態が生じてしまったのは残念というほかない。多くの専門家が強調するように、重度の副反応が起きる頻度は非常に低く、集団レベルで考えればもちろん、接種がもたらす恩恵のほうが、接種が引き起こすコラテラルダメージよりもはるかに大きいのだろう。だから、怖がらずに積極的に接種を受けよう、という呼びかけは理屈の上では正しい。しかし、個人個人のレベルでは、もしその稀な不運が自分の身に起きたら・・・と考えると、極小 のリスクでも回避しようとするのは当然の反応だろう。まさに、「予防の原則」に従った妥当な行動とも言えそうだ。ワクチン接種をはじめとする感染症対策は、本来なら集団の利益と個人の利益がぴったり合致して当然なのだが、ここにきて双方の乖離が目立ち始めた。こうなると、多少の犠牲を覚悟で強権的な体制で 接種を強制する以外には、新型コロナウイルス危機から脱却できないのか・・・と暗澹たる気持ちにさせられる。この際だからせめて、パンデミックを通じて直面する倫理問題についてあーだこーだと色々考えることを日々の楽しみとしたい。