2021年4月6日 編集後記

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4月5日は、フランスにおける女性解放運動の記念碑的な事件である「あばずれ女343人のマニフェスト」の50周年だった。1971年の時点でフランスでは妊娠中絶が堕胎罪として法律により禁止されており、中絶を望む女性は、お金があれば外国で手術を受け、お金がなければ、国内の闇医者による手術を受けるなどの手段に頼るしかなかった。中絶が合法の国においても手術は必ずしも成熟した技術により安全に行われていなかったし、ましてや国内の闇医者の大多数はブラックジャックではないから、危険な施術により身体に取り返しのつかない損傷を被った人も多かったという。そうした状況で、シモーヌ・ドボーボワールをはじめとする作家・知識人・女優など知名度の高い343人の女性が「私は中絶を受けた」と宣言する署名運動に参加した。これが数年後の妊娠中絶合法化に繋がった。
妊娠中絶に関する議論には、ヒト胚は「人間」なのかどうかという倫理的・科学的な問題がつきまとうので、必ずしも簡単には割り切れない面があることは確かだが、ポーランドなどを中心に再び妊娠中絶を禁止しようとする反動的な動きが欧州でも強まっている中で、半世紀前のこのマニフェストの意義が改めて評価されるべきだろう。