仏政府、クリムト絵画を所有者遺族に返還決める

フランス政府は、オルセー美術館所蔵のクリムト(1862-1918)の絵画を所有者遺族に返還することを決めた。バシュロ文化相が15日に発表した。
この絵画「木立の下のバラの木」は1905年頃の作の油絵で、約1.10メートル四方の正方形をしている。フランス政府は1980年に画商からこの絵画を購入。フランスの国立美術館が所有するクリムトの作品はこれが唯一となっている。購入当時は知られていなかったが、この作品は、もとはユダヤ人実業家のビクトル・ツッカーカンドル氏が購入。相続を経てノラ・スティアスニ氏の所有となっていたが、オーストリアのナチス政権の下で、1938年にわずかな金額での売却を事実上強要された後、スティアスニ氏とその家族(母、夫、息子)は1942年に強制収容所に送られ、そこで全員が死亡した。スティアスニ氏のおばの一人が、フランス人実業家のポール・クレマンソー氏(首相を務めたジョルジュ・クレマンソーの弟)と結婚しており、その遺族に返還されることになる。
フランス政府は画商ナータンからこの絵画を購入したが、ナータンにこの作品を持ち込んだ人物が、ナチス政権とつながりがある人物であり、スティアスニ氏から作品を買い叩いた本人であったことが後の調べで判明した。購入が正規の手続きを踏んでおり、当時に事実関係も知られていなかったことから、フランス政府には返還に応じる法的義務はないが、あえて返還に応じることを決めた。国有美術品の譲渡には国会の承認が必要であり、手続きにはしばらく時間がかかる。返還までの間はオルセー美術館で展示が継続されるが、あいにくと現在はコロナ対策で閉館中のため見られない。