2021年3月2日 編集後記

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フランスでは最近、中学生同士の抗争で死者が出る事件が連続して発生し、世論を震撼させた。居住地区毎に若者が徒党を組んで争い合うという現象自体は昔からあり、これに麻薬取引を中心とする経済的利害が絡むと、抗争がエスカレートしがちなのも以前から指摘されてきたことだが、それにしてもローティーンの少年少女が刃物や銃器で乱闘を繰り広げるという状況にはさすがに肌寒い思いを禁じえない。
ところで日本アニメ史上の重要作と評される『新世紀エヴァンゲリオン』を筆者は最近になりフランスでみることができた。もう四半世紀も前の作品で、リアルタイムではみる機会がなかったが、名前はもちろん知っていた。それだけに期待感があったが、正直なところ拍子抜けだった。世界を滅亡から救うために戦っているという設定の主人公たちの会話や心理があまりに幼稚なのである。エヴァの搭乗員は全員が中学生という設定なのだから、しょうがないとも言えるし、良く言えば「成長と自己形成の物語」であり、若いアニメファンであれば、人物の葛藤や行動にも自己移入できるかもしれないが、思春期の悩みなどという滑稽なものに関心のない普通の成人にはちょっと耐えられない面もあり、苦笑いの連続だ(筆者自身はgrow up!と言われ続けている老人だが・・・)。それ以外の面ではなかなか面白い展開もあり、そこはとても楽しめたが、登場人物はある意味で全員が未熟であり、子ども的な思考や感情が全体を支配している。そんな作品が人気を博したことは、社会現象としては面白いとも言えるが、作品への評価が分かれるのも無理はない。
今のフランスの中学生たちの心理や会話は、『新世紀エヴァンゲリオン』の中学生たちのそれ(一番子どもっぽいシンジはまさに「人殺しなんかできない」と言っていた)よりも遥かに殺伐として、凄まじいものに違いないという気がする。パリや郊外の一角での抗争は、世界を救う戦いと比べて実にちっぽけな争いだが、その心はすでに戦場の兵士の荒み方に似ているに違いない。